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オープンイノベーションと大学そして特許

2021年9月6日

投稿者: 北垣和彦

特許法の目的とオープンイノベーションとの整合性

特許法の目的は、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」(特許法第1条)と定義されています。

一方で、ハーバード大学経営大学院のヘンリー・チェスブロウ氏は、オープンイノベーションの概念を次のように定義しています。

オープンイノベーションとは、組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである。

オープンイノベーションへに関わった方々の悩みは、オープンイノベーションにおける発明の取り扱いではないでしょうか?

 

大学と企業の特許の違い

下図は、文部科学省の2021年度発表資料からまとめた大学特許収入ランキングのまとめです。

企業から来た筆者としては随分少ないなぁというのが実感です。1位、2位の京大、東大ですら6億円レベルです。

又、1億円に到達しているのは上位7位までです。

大学は企業とは異なり、事業をしている訳ではなく、事業視点で特許を獲得している訳ではないからだと思われます。

企業で発明が創出される主なプロセスは商品開発です。新商品を開発するプロセスで創意・工夫をこなそうとして発明が生まれるケースが多い訳です。又、企業が特許を出願する際には、あらゆる場合を想定して、周辺特許も出願します。

かたや大学は商品開発プロセスではなく、研究プロセスの中で発明が生じるので、事業化には結び付きにくかったり、大学は予算が限定されているので、周辺特許まで出願するのは困難です。

企業が商品開発するために先行技術調査をして、大学の特許が自社の開発商品に抵触していた場合、企業はその大学の保有する特許を積極的に使いたいと思うでしょうか?

企業としては、少しでも出金を減らすために、大学はあまり周辺特許を取っていないので、その大学の特許を用いなくよい抜け道を探そうとするのが通常ではないでしょうか?

いずれにしても日本の大学の特許収入の総額は米国と比較して20分の1程度ですので、産学連携体制をはじめとして構造的な課題が日本の大学には存在しているのではないかと思います。

 

オープンイノベーションと大学

文科省の事業です。文科省が作成した資料から、背景と狙いを下記通り抜粋しました。

**以下、引用

近年、産業構造や世界経済の変化、技術の躍進等が急速に進み、産業界ではオープンイノベーションの機運が非常に高まり、大学の優れた知識・技術、人材に大きな期待が寄せられています。 

今後オープンイノベーションを推進するためには、大学・国立研究開発法人・企業のトップが関与する、本格的でパイプの太い持続的な産学官連携(大規模共同研究の実現)、「組織」対「組織」の共同研究へと発展させることが重要です。 

しかしながら、我が国では、大学の研究者個人と企業の一組織(研究開発本部)との連携にとどまり、共同研究の1件あたりの金額が国際的にも少額となっています。 

企業側からは、我が国の大学においては、海外の有力大学と比べると、 

①企業に対する提案力

②部局横断的なチーム編成等連携の柔軟性

③財務・知財管理等に関するマネジメント体制

等に課題があると指摘されています。  

こうした中、政府においては、2025年度までに大学に対する企業の投資額を3倍(2014年度比)とするという高い目標を定めました。この目標を実現するため、平成30年度より本事業を開始しました。

**引用ここまで

オープンイノベーションを考える際に、ある企業がセンターになった場合、企業間の利害関係が生じるので、難しくなります。

大学がセンターになってオープンイノベーションを推進すれば、利害関係が生じにくくオープンイノベーションが推進しやすくなると期待されています。

 

オープンイノベーションと特許

大学をオープンイノベーションのセンターのセンターにしようとしている動きがあるのは良いとして、では大学中心のオープンイノベーションにおいて、前述の発明とそれに伴う、特許の問題はどう解決すればよいでしょうか?

私自身、幾つかの仮説を持っておりますが、長くなりますので、別のコラムで思考実験としての見解を、別途投稿したいと思います。

大阪工業大学

研究支援・社会連携センター

シニアURA

北垣和彦

 

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