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研究テーマ
自然科学
学科の分類
工学部一般教育科

淀川下流域に生息する移入種チュウゴクスジエビと、在来種スジエビの生息状況

工学部

一般教育科

生物学研究室

三橋雅子 准教授

淀川下流域のワンドでは外来魚駆除活動のための地引網が定期的に行われている。この地引網で混獲されるスジエビ類を調査したところ、中国原産の移入種チュウゴクスジエビPalaemon sinensis (Sollaud, 1911)が多数確認された。よく似た在来種のスジエビPalaemon paucidens De Haan, 1844も採集されており、移入種のチュウゴクスジエビの分布の広がりによって在来のスジエビのほか、在来生物群集への影響が懸念されるため、この2種の生息域や食性の違いについて調査を進めている。

当大学の大宮キャンパスの目の前にある淀川のワンドには、特定外来生物に指定されているオオクチバスやブルーギルをはじめとした、さまざまな移入生物が生息している。

城北ワンドはイタセンパラなどの希少な魚類が生息する環境となっているため、幅30mの地引網を使った定期的な外来魚の駆除活動が「淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク」(以下、イタセンネット)によって行われている(図1)。

図1. ワンドでの地引網採集物仕分け作業

この地引網調査で採集された魚類は種ごとに個体数、体長の計測が行ない、データの集計をしているが、混獲される甲殻類などの無脊椎動物については詳細について調査が行われてこなかった。

筆者がこの地引網で混獲されたスジエビ類を調査したところ、中国原産で外来種のチュウゴクスジエビPalaemon sinensis (Sollaud, 1911)(図2)が多数含まれていることが明らかになった。この外来種のエビは、釣り餌として大量に輸入されてきたことが報告されており、近年、日本各地の淡水域から報告が相次いでいる。一方で在来種のスジエビPalaemon paucidens De Haan, 1844(図3)も採集された。この2種はよく似ているため混同されてきたが、生時の模様や形態的な差異から識別は可能である。

図2. 木曽川で採集されたチュウゴクスジエビ
図3. 淀川庭窪ワンドで採集されたスジエビ

スジエビP. paucidensにはいくつかの系統が認識されており、陸封性と両側回遊性のタイプが知られているが、今回確認されたスジエビ標本のmt 16S rDNAの一部の配列を調べたところ、いずれも琵琶湖原産とされる陸封性であることが確認された。

在来種のスジエビに比べて移入種のチュウゴクスジエビは流れの少ない閉鎖的な環境に生息していることが報告されているが、この2種が競争関係にあるのかなど、その詳細はわかっていない。そこで本研究では、地引網を引いた地点ごとに採集されたスジエビ類を分け、2種が同所的に生息しているのかを調べているほか、胃内容物の調査を行なっている。同じ網に2種が入ることもあるが、時期によって、採集されるスジエビ類の個体数の変動が激しく、特にチュウゴクスジエビは大量に採集される場合と、全く採集できない場合があり、継続した調査が必要である。

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