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研究テーマ
IT・IoT・AI・ロボティクスナノ・材料
学科の分類
工学部電子情報システム工学科

酸化物エピタキシャル薄膜の作製とプロトンゲートトランジスターへの応用

工学部

電子情報システム工学科

ナノマテリアル研究室

小池一歩 教授

共同研究者

廣芝伸哉
小山政俊
酸化物半導体分子線エピタキシャル成長プロトネーション

三酸化モリブデン(MoO₃)および酸化タングステン(WO₃)は、電気化学的にイオンを挿入・脱離することにより、電気的・光学的特性が大きく変化する特性を有する酸化物半導体です。近年、これらの材料特性を活かし、ニューロモルフィックデバイスへの応用が注目されています。我々はこれまで、格子整合性を有する酸化物単結晶基板上に分子線エピタキシー(MBE)法を用いてMoO₃およびWO₃のエピタキシャル薄膜を成長させ、電気化学的にプロトンを注入した際の構造変化および電気・光学特性の変化を詳細に検討してきました。例えば、膜厚わずか40 nmのMoO₃薄膜に対して、2.8 mC/cm²の電荷密度でプロトンを注入したところ、電気抵抗率が約5桁低下し、半導体から金属への相転移的挙動が観察されました。現在は、この知見を応用し、MoO₃およびWO₃薄膜表面にプロトンを含有するナフィオン膜を接着させたプロトンゲートトランジスタの開発に取り組んでいます。本研究シーズは、MoO₃およびWO₃エピタキシャル薄膜の高品質な結晶成長技術と、それに基づく材料物性の知見の提供です。

WO₃やMoO₃は、H⁺、Li⁺、Na⁺などのカチオンを結晶格子内に挿入することで物性が大きく変化する酸化物半導体です。これらの半導体材料は、古くから電気二重層キャパシタや二次電池、スマートウィンドウなどへの応用研究が進められてきました。近年では、電気化学的なイオンの挿入・脱離によって生じる伝導率の時間応答を利用したニューロモルフィックデバイスへの応用が、精力的に進められています。MoO₃には、熱力学的に安定な直方晶(orthorhombic, α)相と、準安定な単斜晶(monoclinic, β)相が存在します。これまで、さまざまな方法でα-MoO₃薄膜が成膜されており、デバイス応用に向けた研究が盛んに行われてきました。一方で、β-MoO₃に関しては、成膜法やデバイス応用に関する報告が少ないのが現状です。私たちはこれまでに、分子線エピタキシー(MBE)法を用いて、格子整合性のあるLSAT基板上にβ-MoO₃薄膜をエピタキシャル成長させることに成功しています。また、MBE法で成長したβ-MoO₃薄膜に電気化学的にプロトンを注入することで、電気的および光学的特性が大きく変化することも明らかにしてきました。

MBE成長したMoO3エピタキシャル薄膜の表面にオーミック電極を形成し、硫酸水溶液(電解液)を介して、電気化学的にプロトンを注入しました。

プロトンを電気化学的に注入すると、β相由来のX線回折ピークが消滅し、代わりにモリブデンブロンズ(HxMoO3,x=0.99)由来のピークが現れることがわかりました。

さらに、可視光~近赤外線領域の透過率が減少し、薄膜の電気抵抗率が大きく減少することも明らかになりました。抵抗率の温度依存性も調べたところ、半導体から金属への相転移を示唆する挙動が観測されました。

現在、硫酸水溶液を固体電解質であるナフィオンに置き換えて、プロトンゲートトランジスターを試作中です。今後は、プロトン注入による抵抗率の時間応答特性を評価し、ニューロモルフィックデバイスへの応用可能性について検討を進めてまいります。本研究の一部は、公益財団法人JKA、競輪の補助事業を受けて実施しております。

研究室ホームページ

https://www.oit.ac.jp/labs/eng/elc/koike/

論文

「β-MoO3単結晶薄膜の分子線エピタキシャル成長と 電気化学的なプロトン注入効果」(2025)鶴山大翔『電子情報通信学会誌』ED2025-15p.14-17.

「格子整合系基板へのβ相三酸化モリブデン薄膜の結晶成長と エレクトロクロミック特性」(2024)小池一歩『電気学会論文誌C』144-11p.1071-1077.

「Electrochromic properties of epitaxial WO3 thin films grown on sapphire substrates」(2018)YanoMitsuaki『Japanese Journal of Applied Physics』57p.100309(4pp).

研究者INFO: 工学部 電子情報システム工学科 ナノマテリアル研究室 小池一歩 教授

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SDGs
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