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研究テーマ
土木・社会基盤
学科の分類
工学部都市デザイン工学科

空間の「ゆがみ」と避難経路

工学部

都市デザイン工学科

空間デザイン研究室

田中一成 教授

都市計画環境デザイン災害

都市居住者の認知空間を取り出し,居住者が認知するまちの姿と現実空間の差違を明らかにすることで,都市空間における「ゆがみ」を抽出することを目的としています。最終的には,このゆがみをもとに,災害時の避難経路と避難場所の設定手法を提案することを目標とします。早く着きたいと思いながら避難しつつなかなか進まない経路と,よく知っていて好きな道であっという間に着く経路がある可能性があり,広く,安全なというイメージも合わせて日常的に接する形成されている可能性をみいだしました。

背景  Introduction

まちはひとりひとりにとって異なるが・・どこか似ている

子どもたちは,われわれが忘れてしまったまちの姿を知っている,というのがこの研究の出発点である。子どもたちが日常暮らす街では,例えばともだちが多いところは隅々まで知っており近く感じており,逆に普段通らないところや怖くて行かないところなどは,遠く感じて通り抜けるのも長い距離だと感じる。

このように生活する街に対する感じ方は,特にパニック時における避難の際に大きな影響があると考えられる。これら影響を与える要素とその影響について,子どもたちの心理を絵として取り出し統計的に分析することで,現状よりよい避難経路を設定するだけでなく,将来よりよい街づくりにつなぐことができる。

空間に対するこのような素直な感覚が,実は我々にも,高齢者にとっても,災害時に逃げやすく,あるいはさまざまな判断をしやすい仕組みをつくる手助けになる可能性があるのではないだろうか。

目的と方法  Purpose and Method

「ゆがみ」をとりだす

本研究では,都市居住者(年齢による発達段階を考慮して小学校5年生・6年生を対象)の認知空間を認知マップとして取り出し,居住者が認知するまちの姿と現実空間の差違を明らかにすることで,都市空間における「ゆがみ」を抽出することを目的とする。最終的には,このゆがみをもとに,災害時の避難経路と避難場所の設定手法を提案することを目標としている。

調査と実験  Questionnaire and Survey using Cognitive Map

25サンプル・191サンプル

まず,2019年8月大阪府内の児童に描いてもらった認知マップを現場と比較することで,児童の認知空間と現実空間との差異の有無を確認し,これを捉える手法の検討を目的とした予備実験を行った。この調査を経て,2019年12月に画用紙と色鉛筆を児童に配布し,自由に通学路を描いてもらう本調査を行った。

認知空間のゆがみ  Distortion in Spatial Cognition

色と形と大きさで表された空間

描画要素を色別にみると,家・集合住宅・教育施設・遊び場・駄菓子屋と友達と会う場所や遊び場や楽しい場所のようなプラスのイメージが強い場所に,明るい色が使われていることがわかる。さらに,児童が認知マップに描画した道路の全長と,それに対応する現実空間の道路距離を基準として定量化を行った結果,自宅付近,学校付近が長く,多くの要素が描かれており,児童にとって身近な空間と考えることができる。また何も描かれず長く描かれた道もあり,この空間も長く感じられている。

位置が明確な認知マップについてみると,自宅付近道路は1.42倍,学校付近道路は1.19倍となっている。

描画要素として横断歩道が描かれている割合は高く(全体の27.3%,その他の道路標示を含むと32.8%となる),横断歩道のある道はそのイメージの大きさを表していると推測できる。

児童は育った環境や住む地域によって印象に残っているものが異なり,郊外では家や集合住宅や学校,遊び場など,日常子どもたちが主に友達や家族と過ごす場所が上位に挙がっているのに対し,中心部では駐車場や公共施設や飲食店など,友達との遊び場というより通学路圏内にあり目立つものが描かれている。

避難経路  Evacuation Route

逃げやすいのはどこ?

避難経路の設定にあたり,身近な区域であっても交通量の多い道路,幹線道路について認知空間上その存在は大きく,これを横断する経路には問題がある。

 中心地区では大型商業施設,中小規模の市街地では商店街への心理的な行きやすさが際立っており,これらの施設を避難場所と関連づける工夫も今後の課題となる。

集合住宅,駐車場は,心理的に抽象化され,日常的に接する間に高い,広い,というイメージが形成されている。また,早く着かなければならないと思いながら避難する経路と,よく知っていて好きな道であってあっという間につく経路が日常空間には存在している。

これらを多量なサンプルをもとに線的な要素から面へと広げることで,避難経路や避難場所の設定に寄与する可能性がある。今後は,避難しやすい空間,避難することが苦痛ではない空間について,子どもたちだけではなくパニック時の避難経路として積極的な検討が有効と考える。

研究者INFO: 工学部 都市デザイン工学科 空間デザイン研究室 田中一成 教授

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SDGs
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