ドローンの閉ループシステム同定によるモデリングと飛行制御

工学部

電子情報システム工学科

システム制御研究室

宏史 教授

共同研究者

牛田

幅広い産業でビッグデータの活用が進んでいるが,予測・診断・制御・意思決定の精度向上に際してモデルの重要性が近年ますます高まっている.データエンジニアリングのひとつの分野として,システム同定法によるデータ駆動モデリングについて紹介する.具体例として,MOESP型閉ループ部分空間同定法(CL-MOESP)によるドローンの閉ループ同定と,得られた同定モデルを利用した最適制御器設計の事例研究を紹介する.

モデリングと制御

モデリング(modeling): 対象とするシステムのモデルを構築すること.

モデル(model): 対象の特性を記述するもの(あるいは表現)ここでは特に数学モデルのことをいう.

モデルは実システムの具体的な世界と制御理論の抽象的な世界を結びつけるインタフェース

モデリングの二つのアプローチ

第一原理モデリング(first principle modeling, 物理モデリング,ホワイトボックスモデリング)

運動方程式,保存則,回路方程式,化学反応式など,対象の特性を支配する科学法則(第一原理)に基づくモデリング

システム同定(system identification, ブラックボックスモデリング)

対象の振る舞いをセンシングして得られたデータに基づくモデリング

データエンジニアリングにおけるモデリング 

多層ニューラルネットワーク

  • 大量のデータを使って,
  • 大規模(冗長な)な構造を決めて,
  • 重みを求める.
  • 非線形も扱える.

目的:入出力間の関係を説明する.
主な用途:予測,変化検出,診断

システム同定

  • 与えられたデータを使って,
  • 対象の動特性を考慮した上でモデル構造を決めて,
  • モデルの係数(重み)を求める.
  • 静的非線形は扱える.

目的:対象の動的振る舞いを説明する.

主な用途:予測,変化検出,診断,制御

インテリジェントな機械に自動制御は必要.制御系設計には「動的モデリング」が不可欠!

技術シード:MOESP型閉ループ部分空間同定法(CL-MOESP)

理論

  • Direct closed-loop subspace model identification algorithm (43rd CDC 2004)
  • QR-factorization-based (MOESP-type) direct closed-loop subspace model identification algorithm (MTNS 2006,計測自動制御学会論文集 2006)
  • 推定値の漸近的性質 (MTNS 2010,計測自動制御学会論文集 2010)
  • 推定値の一致性 (IFAC World Congress 2020, IFAC SYSID 2021) 

実証研究・応用研究

  • 台車-倒立振子系 (ICCAS-SICE 2009)
  • 同軸反転式小型ラジコンヘリコプタ  (IFAC SYSID 2012, 日本機械学会 2012,SICE 2014)
  • クワッドロータドローン (IFAC SYSID 2018)

AR.Drone2.0(クアッドコプタ)を用いたデュアルレート系の閉ループ同定法の実証実験

閉ループシステム同定実験

実験で採取したデータを用いてCL-MOESP法により同定モデルを得る.

大きなモータ音が聞こえます.音量にご注意ください.

同定モデルを使った最適制御器の設計

ホバリング飛行実験による制御系の検証

手順:

  1. オンボードプログラムを使って地上1mまで上昇させる
  2. フィードバック制御開始 

システム同定より得られたモデルに基づき制御器を再設計することにより揺動幅が減少した.

論文

「An Experiment on Closed-loop System Identification of UAV Using Dual-rate Sampling」(2018)NakayamaMitsuhiro『IFAC-PapersOnLine』51(15)p.598-603.

「Closed-Loop Identification for a Continuous-Time Model of a Multivariable Dual-Rate System with Input Fast Sampling」(2018)NakayamaMitsuhiro『IFAC-PapersOnLine』51(2)p.415-420.

「MOESP-type closed-loop subspace model identification method」(2006)宏史『計測自動制御学会論文集』42(6)p.636-642.

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