オクシモロンの謎―意味の矛盾と伝達効果
オクシモロンとは「小さな巨人」のように反対の意味が同じ対象に適用されるレトリックである．「小さくて大きいものは何だ？」とすれば「なぞなぞ」にもなり得るが，字義通りに考えれば反対語が共起しているのだから矛盾することになる．しかし，実際には意味解釈に支障は来さない．それどころかこのレトリックならではの伝達効果がある．オクシモロンの構造，伝達効果は私の研究テーマの一つである．
我々は，これまでに担当した工学系大学においてオンライン授業時の学生の受講環境を継続的に調査してきた．また，演習を伴うオンライン授業であったため，外部モニタの有用性を説き，導入を促し，実際の導入についても調査を行ってきた．これらのオンライン授業環境調査が全国の学生と比較してどのような傾向にあるのか調査するため，2021年12月から2022年1月にかけて，LINEリサーチプラットフォームとFreesayの2つのWebアンケートシステムによって，それぞれ全国500人の学生に対してインターネットアンケートを行った．この結果，外部モニタの使用率はLINEリサーチでは23%，Freeasyでは31%となり，学内における我々の過去の調査よりも高い使用率になった．また，オンライン授業の方式に関わらず，広い机や椅子，クッションがあればよかったという回答が目立ち，オンライン授業を快適に受講するために環境や家具が重要であると推測された．
オンライン授業のこれまでと外部モニタ
我々は2020年のコロナ禍以来、2021年度末まで2年間オンライン授業による初年度情報リテラシー授業を担当してきた。この中で、ノートPC1台のみで受講するのではなく、外部モニタの有用性と活用の仕方を積極的に紹介してきた。
2021年度は当初対面形式で授業が開始されたが、感染拡大によってすぐにオンライン授業に切り換えられた。これを予測していたため、1回目の授業時にオンライン授業を想定し、外部モニタの説明を実施した。また、HDMIケーブルのみでテレビ接続もできること、ミラーリングと拡張デスクトップの違いなどを説明した。2021年5月の授業中アンケートでは、外付けモニタ25人、テレビ8人利用（18%）といった利用率だった。
2021年度の外部モニタ使用率
最も多い機械系学科で15名(42%)、全体では25名(14%)、2020年度は9%
2020年度と比較するとやや増えているので、呼びかけは寄与したか。
外部モニタやタブレット機器の使用など、前期からわずかに増えているがあまり変わらないため前期授業などいわば「初めが肝心」である。しかしながら、わずかに増えていることからも定期的に「こういう機器でこのような方法がある」と周知することは意味がある。
電子・情報系学科は2年生からさらにプログラミングや情報系の専門授業が増える。3年生の環境が充実しているところから、これらを通じてPC への興味関心が増す可能性が大いに考えられる。
外部モニタに関する提示資料例
全国的な調査
LINEリサーチとFreeasyの2社を利用してWebアンケートを実施した。
2021年12月にLINEリサーチで調査。結果から設問を再度検討し、2022年1月にFreeasyで再調査。
対象者は全国500人の学生。
アンケート内容
被験者の学校種別、専攻、オンライン授業の期間、オンライン授業で使用した機器、外部モニタの有無、疲労、オンライン授業で使用したい物などを質問。
LINEリサーチ：全9問、Freeasy：全11問
結果：オンライン授業の実施期間
結果：オンライン授業の配信方法
結果：オンライン授業で使用した受講機器
結果：オンライン授業機器とBYOD（持ち込みノートPC）
外部モニタとオンライン授業のアンケート結果
PCによるリアルタイム配信型の外部モニタの使用
PCによるオンデマンド配信型の外部モニタの使用
PCによる課題提示・提出型の外部モニタの使用
オンライン授業期間別の外部モニタ使用率比較
大阪工大内で結果との調査比較
快適に受講するための物品
受講機器別に分類したが、どの受講機器でも、広い机、クッション、ゲーミングチェアが共通項として見られた
ゲーミングチェア
いわゆるeスポーツブームでここ数年注目されている。
価格は数万円程度。ビジネス用として考えるとそれほど高価ではないが、一般的な椅子として考えると高価。
メーカも「テレワークや在宅勤務に」と売り出している
よりよい椅子を求めている？
マウス
PCでオンライン授業を受講した中ではマウスが挙げられている。大阪工大での学内調査でもマウスは欲しいものとして挙げられた。
ノートPCならマウスはスライドパッドを使用すればよいので必須ではないが、「マウス」とわざわざ書くのは何故か。どれを購入すればよいのかわからないのか。わからないから、わざわざ「あれば便利」なものとして挙げるのか（すでに購入・使用しているなら書かないはず）
まとめ
LINEリサーチとFreeasyの2つのサービスを利用し、それぞれ500人規模でオンライン授業の受講環境等を調査した。
我々はこれまで「オンライン授業における外部モニタ使用」について調査してきたが、担当授業における調査と、全国調査においては後者の方がより利用率が高い結果となった。
「オンライン授業を快適に受講するための物品」については、受講機器に関係なく、クッションやゲーミングチェア、広い机など、受講環境そのものに関する家具関係が共通回答として上がった。
以上から次の3点が言えるのではないか
- オンライン授業が長引くことにより、外部モニタの有用性が知られ導入が進みつつあった
- オンライン授業を快適に受講するには受講機器と同様に、使用する環境・家具も考慮する必要がある
- 学生のPC知識はかなり乏しい？
論文
「A Research on Online Learning Environment of Students in Computer Technology Essentials Classes for First-Year Students 」(2021)『Proceedings of Innovate Learning Summit 2021』p.544-548.
「初年度情報リテラシー教育のオンライン授業における受講環境と疲労の調査 」(2021)『情報教育シンポジウム論文集』2021(1)p.61-68.
「全国学生を対象としたインターネットアンケートによるオンライン授業環境調査 」(2022)『研究報告コンピュータと教育（CE） 』2022-CE-165(9)p.1-10.
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