RESEARCH TITLE 【2020年度研究PJ】豪雨水害ならびに火災、地震災害等に向けたAIやIoTセンシングに基づく避難誘導支援プラットフォーム構築に関する研究開発

RESEARCH

ホーム 研究プロジェクト【2020年度研究PJ】豪雨水害ならびに火災、地震災害等に向けたAIやIoTセンシングに基づく避難誘導支援プラットフォーム構築に関する研究開発

RESEARCHER研究者リスト

研究代表者

情報科学部 ネットワークデザイン学科

大島 一能 客員教授

研究分担者

情報科学部 情報メディア学科

佐野 睦夫 教授

研究分担者

情報科学部 ネットワークデザイン学科

塚本 勝俊 教授

研究分担者

情報科学部 情報知能学科

尾崎 敦夫 教授

研究分担者

情報科学部 データサイエンス学科

荒木 英夫 准教授

研究分担者

工学部 建築学科

岡山 敏哉 教授

研究分担者

工学部 建築学科

河野 良坪 准教授

研究分担者

工学部 都市デザイン工学科

田中 耕司 教授

研究分担者

工学部 都市デザイン工学科

山口 行一 教授

OVERVIEW研究課題の概要

地域に大きな被害をもたらす豪雨水害や火災、地震災害等への対策として、局地的な豪雨の発生を予測するAIや建造物倒壊・道路閉塞などの危険度判定ならびに河川やマンホールの水流・水量や建造物・道路の危険度検出などのIoTセンシングによりデータ収集・統合分析を行い、水害や火災、地震被害が想定される地域に向けた避難誘導支援プラットフォーム構築に関する研究開発を行う。

大阪工業大学・情報科学部と工学部A科、C科では、枚方市や大阪府、京都府下の自治体、および情報通信研究機構(NICT)などと連携して、下記の6つのカテゴリを通じて、各種災害に向けた避難誘導支援プラットフォーム構築に関する研究開発を行う。6つのカテゴリは、(1)避難誘導支援エージェント分散協調方式の研究、(2)フェーズドアレイレーダや雲の画像データを活用した局地的短期豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)の予測AI要素技術の研究、(3)下水道マンホールからのIoTセンシングデータ収集および下水道管渠の流れとの相関を用いたデータ同化分析、(4)枚方市や大阪府の中小河川データを併用した水害危険地域の推定技術、(5)マルチエージェント技術等を応用した防災まちづくりに向けた制度設計、ならびに(6)危険度予測とセンシング技術を活用した避難誘導並びに防火・救助活動誘導システムの研究を推進し、これらを統合した形で避難誘導支援プラットフォーム構築に関する研究開発を推進する。

これらの予測データやIoTセンシングデータをビッグデータとして統合分析することにより、豪雨水害や火災、地震災害などに向けた防災まちづくりの制度設計や効率的・効果的な避難誘導支援プラットフォームの構築が可能となり、地域で開催されるイベント会場での多数の参加者の緊急避難誘導支援や長雨時の住民避難誘導の優先地域や最適避難経路の判定支援ならびに火災や地震災害時に危険度判定や建造物・道路のセンシングデータを活用したリアルタイムでの最適避難誘導支援などに大きく貢献することができる。

本研究開発課題が実現されることにより、他の地域にも展開が可能となり、IoT/BD/AI技術を活用した安全・安心な地域社会の発展に結び付けることができる。

REASON課題実施の根拠

本研究を遂行するにあたり、6つのカテゴリに分けて平行して要素技術の研究を推進し、2年目以降に各カテゴリの成果を統合して全体のシステムを構築し、3年目に地域自治体と連携して予測データやセンシングデータの統合分析ならびに避難誘導支援プラットフォームを活用した実証研究を実施する計画である。

具体的な6つのカテゴリとしては、

  1. 避難誘導支援エージェント分散協調方式の研究
  2. 豪雨水害向け予測AI方式の研究
  3. 豪雨水害向けIoTセンシングの研究
  4. 豪雨水害向け市街地内水氾濫予測方式の研究
  5. マルチエージェント技術等を応用した防災まちづくりに向けた制度設計
  6. 危険度予測とセンシング技術を活用した避難誘導並びに防火・救助活動誘導システムの研究

を設定する。以下に、6つのカテゴリにおける解決すべき課題、環境分析、社会的意義、将来性および技術の特徴をまとめる。

1. 避難誘導支援エージェント分散協調方式の研究

天気が急変する局地的短期豪雨(ゲリラ豪雨)や地震は、予期せぬ状況下で発生するため、多くの人々は日常生活を営んでいる最中に被災する場合が多い。これらの自然災害において、人的被害が最も大きい場所は、人口密集度が高い主要駅、大型ショッピングモール、そして各種の大規模イベント会場などである。本研究は、イベント会場で大勢の人が来場している状況を対象に、会場に設置された複数のセンサーから得られる人数分布および人流情報と、下記に示す各種のセンシング情報に基づいて、複数の誘導員および警備員を介して、来場者に安全かつ迅速な避難経路を提示するための方式を開発するものである。

本方式は、時々刻々と変化する危険エリアの状況やイベント内の群衆の分布情報に基づき、リアルタイムで警備員または誘導員への的確な避難誘導指示や避難経路を提示するための新しい方式を開発するものであり、マルチエージェントシミュレーション技術および各種の最適化技術をベースとする。例えば、ゲリラ豪雨の場合は、提示する情報の精度向上のために、気象レーダ等のセンサー側に対し、指定したエリアの気象・水害状況に関する観測精度向上を要求できる仕組みも検討する。

大阪工業大学情報科学部が立地する枚方市では、毎月市内中心部で「枚方宿くらわんか五六市」という一万人近くの市民が集うイベントが開催されており、突発的なゲリラ豪雨や地震が発生した場合などでの避難誘導のニーズがあり、枚方市やイベント実行組織等と連携した取り組みを開始している。

本方式が実現できれば、各種の防災対策の基盤となるだけでなく、人流情報を活用したビジネス展開など、平時~有事において、来場者の安全・安心、さらにはイベント・施設運営者の効率的な経営を支援する社会基盤構築と成り得る。

2. 豪雨水害向け予測AI方式の研究

豪雨予測AI方式における課題は、5~10分程度の短期間に突然50mm/hを越える豪雨が始まる現象に対して、避難誘導や住民の水害に対する対策を行うために30分以上前の時点で発生地域と時刻を予測することである。

このような困難な課題に対して、これまでに国土交通省で整備されている気象レーダ網で観測されている降雨分布データ(XRAIN)を活用して、事前に局地的短期豪雨の兆候を捉える研究が京都大学防災研究所を中心に行われ、一部の機能がXRAINの試用システムとして運用されている例があるが、まだ一般公開される状況に至っていない。今回の新しい取組みは、XRAINデータとNICTで研究されているPAWR(Phased Array Weather Radar)のオープンデータに加えて、地域に設置した光学カメラによる雲の撮影データを併用して精度の高い予測方式を実現することを目標としており、実際の雲の画像分析をXRAINやPAWRのデータと併用した研究はこれまでに例が見られない。

大阪工業大学情報科学部では昨年の7月から周辺上空の雲の画像を1分毎に自動撮影してデータサーバに蓄積するシステムを構築し、日中の局地的短期豪雨を主な対象としてデータベース化している。また、同時刻のXRAINデータも併せてデータベース化し、昨年に発生した枚方市周辺地域での局地的短期豪雨に関して、雲の画像データとXRAINおよびPAWRのオープンデータを照合して、三者のデータ間の関係性をAIプラットフォームを活用して学習し、30分程度の時間経過を分析・予測する方式を構築する。また、公開されていないPAWRデータを有するNICTとの連携も承認頂いており、今年度は各種データを有効に活用するアルゴリズムを考案して精度の高い豪雨予測AI方式の実現に取り組む。

本方式が実現できれば、豪雨予測を基盤として避難誘導支援など地域の防災対策に活用することができ、安心・安全な社会基盤構築に向けて大きな社会的意義がある。

3. 豪雨水害向けIoTセンシングの研究

地域における下水道網の水量などを下水道のいくつかのマンホールに設置した各種センサーによりセンシングし,得られたデータをLPWAで拠点に設置されたエージェントサーバに転送するシステムの開発が課題である.このシステムでは電源設備が無い,マンホールにおいて安定した長期間のバッテリ駆動,平常時の間欠動作モードと避難誘導支援エージェント起動時のエージェントの指示に従うリアルタイム測定モードの切替プロトコルの開発も課題である.解決手法として、地域における下水道や河川支流の水位ならびに水流を各種センサーによりセンシングしたデータを活用した地域水流危険度予測方式を検討している。

市町村などの自治体が管理運営する下水道の老朽化が進み,耐震性,原因不明な流量の増減が問題となっている.特に短期的な局所豪雨が発生したとき,汚水と雨水の分流方式を採用しているにも関わらず、急激に増加した雨水が汚水に混ざり,下水処理場の能力をオーバーすることが問題となっており,有効な対策が取れていないまま,急激に冠水・浸水被害が発生している.このような突発的な水害に対しては迅速な避難誘導/行動が取れず,市民生活に多大な困難を与えている.

本カテゴリでは,自治体と連携し,水道局の協力を得て下水道網のいくつかのマンホール内に水量,水流速を計測するセンサー,マンホール周辺の降雨量,温度,振動の計測するセンサーを設置する.これらのセンサーからの測定値を集約して,マンホール内に設置した無線装置からLPWAネットワークを介して避難誘導支援エージェントに転送する.このような豪雨水害に向けたIoTセンシングシステムを開発する.

従来からも、マンホールなどにセンサを設置して水位や流量を測定する試みは行われているが、これらを地域でネットワーク化し、水害の予測に活用する段階まで行われている例は見られない。

本システムが実現できれば、次のカテゴリで示す河川を含む内水氾濫の予測精度向上が期待され、避難誘導支援システムを通じて、地域の安心安全な社会基盤の構築に大きく貢献することができる。

4. 豪雨水害向け市街地内水氾濫予測方式の研究

第3のカテゴリで述べたマンホール等に設置されたセンサから得られるデータと下水道管渠の流れとの相関から,市街地の内水氾濫をいち早く予測するためのデータ同化手法を駆使した流体力学的なアプローチを実施する。

各カテゴリの要素技術を開発した後に、センサーによる観測とデータ同化手法を応用した社会実装に向けたシステムのプロトタイプを構築する計画である。

実証システムを通じた検証により,避難誘導支援システムによる安心安全な社会基盤の構築を初め、水害への種々の減災対策による都市機能の麻痺を回避することに貢献できる。

5. マルチエージェント技術等を応用した防災まちづくりに向けた制度設計

カテゴリ(1)および(3)における基礎技術から得られるデータをもとに大阪の地下街を模したモデルを構築し、大規模水害(津波・洪水)での避難経路の最適化の結果を都市計画での制度に組み込めるような融合的な研究を実施する.

具体的には,地下街の集客状況をリアルタイムで把握するためのセンサー技術の検討を行う.並行して,地下街での集客効果と避難所・経路等の情報をGISで整理し,センサ設置の最適な方法を提案し,社会実装に向けた新たな地下街の管理システム・体制のプロトタイプの構築をする計画とする.

制度設計の根拠となる基礎データの必要性およびそれに基づく制度の姿を明確にすることは,地下街を経営する会社のBCPの構築に貢献できるばかりでなく,有事に多くの命を守ることに貢献できる.

6. 危険度予測とセンシング技術を活用した避難誘導並びに防火・救助活動誘導システムの研究

地方自治体の地域防災計画においては、市街地の災害危険度の判定、被災の想定が行われており、それに対する公共施設や防災街区の整備が図られている。
しかし、その整備には時間と経費がかかり遅々として進んでいない。

一方、災害は予測不可能であり、想定どおりに災害が発生するとは限らず、想定外の災害が生じた場合、その不確定な想定に基づく防災対策は機能しない。

そこで、現時点での市街地の危険度判定に基づき避難経路の最適解を求める。既存の危険度判定では、火災時の煙拡散で影響を受ける見通し距離の低下による避難障害は考慮されておらず、この状況に対しては数値解析で分析する。
一方で、危険度の高い市街地にセンシングシステムを構築し、避難時のリアルタイムで道路閉塞箇所を把握することにより代替ルートを選択できるなど、より安全性の高い防災アクティビティが遂行できるシステムを構築する。

これらの分析やシステム構築において、本研究は独自性を持つ。

また、VRを活用した疑似的な災害体験や避難シミュレーションによる防災啓蒙支援技術は、自治体・学校・企業からの要求が高い。今までの取組に加えて、組織的な防災啓蒙の強化にも力を入れていく。

これらの結果は、災害時の避難だけでなく、逆ルートをたどる防火活動や救助活動の迅速化にもつながる。この点においても、本研究は社会的意義及び将来性を持つ。

EFFECT期待効果

期待される研究成果

  1. 避難誘導向け協調型マルチエージェントシミュレーション方式に関する研究発表(電子情報通信学会等)
    国際学会への研究発表、電子情報通信学会または情報処理学会への論文投稿
  2. 局地的短期豪雨の予測AIに関する研究発表(電子情報通信学会または情報処理学会)

    国際学会への研究発表、電子情報通信学会または情報処理学会への論文投稿
  3. 豪雨水害対策向けIoTセンシングに関する研究発表(電子情報通信学会など)
    国際学会への研究発表、電子情報通信学会への論文投稿
  4. 土木学会、国際会議への論文投稿
  5. 日本建築学会、日本都市計画学会などのSCOPUSのデータベースへの収録対象となっているジャーナルへの投稿

期待される知財の成果

  1. 避難誘導向け協調型マルチエージェントシミュレーション方式、及び、
  2. 局地的短期豪雨の予測AI
 に関係する特許出願2件
Back To Top
a

Display your work in a bold & confident manner. Sometimes it’s easy for your creativity to stand out from the crowd.

Social