大学におけるアントレプレナー教育の意義について
2021年4月14日
アントレプレナー教育と学力
近年、アントレプレナー教育が注目されています。小中学校向けアントレプレナー教育に熱心な都道府県は学力も高いという文科省の報告もありました。
ではなぜアントレプレナー教育が注目されていて、学力向上に結び付く事が期待されているのでしょうか?
必ずしも起業することを学ぶ事が、アントレプレナー教育の神髄ではありません。教育の目的は、人類の長い歴史を通じて獲得された叡智を共有する事により、世の中のあらゆる課題解決につなげていくという点が挙げられます。
課題解決のプロセスを学ぶ事がアントレプレナー教育の本質であると筆者は考えています。他コラム記事でも、筆者のベンチャー起業経験について述べましたが、このような経験による学びは、受動的な学びやルーティン業務を通じての学びの数倍以上の効果と効率性があったと実感しています。
能動的な課題解決こそがアントレプレナー教育が学力向上に有効であると思われる根拠の一つです。
又、アントレプレナー教育による目標は自ら会社を起こすことではありません。社内起業家という言葉があります。会社はその存続のためには常に、新たな事業を立ち上げて行く必要があり、起業家精神を持った人材が常に新規事業に挑戦しつづける事が求められます。
企業も起業家型人材が不足しています。たとえ自ら起業しなくてもアントレプレナー教育を受ける事は、企業に就職した場合でも活躍の場が広がる可能性を秘めています。
社会貢献と事業
そもそも起業は何のために行うのでしょうか?
それは簡潔言えば、事業を通じて社会貢献を行うためと言えるでしょう。すなわち人間として生きている限りにおいては、何らかの形で社会に参加し、サービスを人々に提供したり、農作物を育て、社会に流通させたり、なにか人々の役に立つ製品を製造して、社会のお役に立ったりするという事が求められるわけです。
世の中は常に変化しており、複雑化しています。それに伴い、新たな課題解決や、新サービスのニーズが生まれてきます。そのニーズを事業という形で応える事が起業であると考えます。
大学にとってのアントレプレナー教育
実際に事業を起こすには、いろいろな知識やスキルが必要とされます。PBL(Problem Based Learning)という言葉があります。日本語に直訳すれば課題解決型教育です。何か一つの課題解決を通じて、その課題解決に必要な知識をオンデマンドに身につけていく事が、PBLには求められます。
又、多くの研究において課題解決やOUTPUTが教育に非常に効果的であるという事が確認されていますので、PBLは教育業界においては大変期待されている教育方法となっております。
PBLのプロセスは、起業のプロセスと相似しています。だからこそアントレプレナー教育は学力アップにつながると期待できます。
アントレプレナー教育は効果的である事が分かっていても、大学教育として実施するには課題があります。大学の教職員で起業経験のある人材はごく少数派であるのが現状だという事です。起業経験が」なくてアントレプレナー教育を行うのは、いわゆる畳の上の水練と言った所でしょうか。
そのための解決策としては、自ら起業経験のある大学教職員が他大学の学生さんも教える事ができる仕組みづくりです。現在、大阪工業大学は、京阪神スタートアップアカデミア・コアリションに所属しており、当該コンソシアムを通じてのアントレプレナー教育の提供可能性を探っています。
京阪神スタートアップアカデミア・コアリションに関する参考記事
下図に示します通り、大学発ベンチャーの起業数は年々と増加しております。
大学発ベンチャー数の推移(経産省ホームページより引用)
大阪工業大学
研究支援・社会連携センター
シニアURA
北垣和彦