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システム思考とデザイン思考、そしてアート思考へ

2021年4月19日

投稿者: 北垣和彦

行き詰まり感のある社会

皆様は最近、社会の行き詰まり感を感じないでしょうか?昔に比べて色々な問題が複雑化しています。

例えば、人々のニーズは多様化し、どのようなサービス、商品を提供すれば良いのか分かりにくくなってきています。

従来的な課題解決のための思考方法はシステム思考と呼ばれる思考が中心でしたが、システム思考だけでは、複雑化した社会に対応できなくなってきています。

 

そしてデザイン思考の登場

このような複雑化していく社会において、システム思考のアンチテーゼとして生まれてきたのが、デザイン思考です。世間で良く勘違いされるのは、デザインとデザイン思考と延長線上で理解されている事です。

ではデザイン思考とは何でしょうか?デザイン思考とは一言で言えば、デザイナーの思考法です。デザイナーの思考法を大家的にまとめたのが、デザイン思考です。

大阪工業大学は空間デザイン学科というデザイナーを養成する学科があります。

空間デザイン学科の教員はバックグラウンドがデザイナーである事が多いので、一緒に仕事をさせて頂いていると「あ~デザイナーってこんな仕事の仕方をするんだなぁ」と感心させられる事が多いです。

教科書でデザイン思考を学ぶよりもデザイナーの仕事の仕方を観察している方がよほど、デザイン思考の事が理解できます。

まず、デザイナーは議事録なんて書きません。議事録を書く代わりに、イラストを描いたり、実際の試作品をつくったりします。それは人の目につく所に置かれます。

議事録って、皆さん見返していますか?めったに見返さないのが現実ではないでしょうか?

それよりも皆が目に見えるところに目標やビジョン、やるべき事が、イラストやモノで示されている方が情報共有しやすいし、実行に移されやすいでしょう。

会議室で議論ばかりして、何も決まらず、プロジェクトが全然、進行しない・・・・

ガントチャートを会議の度に作成して提出するが、常に予定より遅延して、言い訳け会議になる。

会議を重ねた結果、経営者層に忖度した、斬新さも、面白さもない無難なアイデアが採択される。

日本の会社や組織では、ありがちな光景です。

デザイナーの仕事の仕方は、そんな非効率なプロジェクト運営ではなく、どんどん行動に移して行くやり方です。

 

 

システム思考について

デザイン思考の反意語的存在としての思考法は、システム思考です。

システム思考はもはや古いのでしょうか?

そしてシステム思考はもはや役に立たないのでしょうか?

決してそんな事は無いと筆者は考えます。

定型的なルーティン化された業務においては、まだまだシステム思考は有効です。

システム思考の方が良いのか、デザイン思考の方が良いのかという議論は無意味であり、双方にメリット、デメリットがあり、場面に応じて、双方の良いとこどりをすれば良いのではと筆者は考えています。

デザイナーのペンタグラム社のナターシャ・ジェン氏は「デザインシンキングなんて糞食らえ」とデザイン思考に対する疑問を呈しています。

氏の主張は、デザイン思考が設定する5つのステップ、即ち1.共感 2.問題定義 3.創造 4.プロトタイピング 5.検証で、すべての問題を解決できるはずがないというものです。

システム思考のアンチテーゼとしてのデザイン思考は筆者も共感できるのですが、デザイン思考万能主義を唱える人もいる中、ナターシャ・ジェン氏の話には思わずうなづいてしまいます。

尚、下図は企業等のイノベーションプロセスにおいてデザイン思考がシステム思考と交ざりあってどのように組み込まれるのかその概念をデロイトトーマツ社作成の図表を参考に、筆者の経験・知見に基づき、作成したものです。

そしてアート思考

このようにデザイン思考に対するアンチテーゼのして最近、注目されているのがアート思考です。

デザイン思考がデザイナーの思考法とするならば、アート思考はアーティストの思考法と言えるでしょう。

アーティストとは自己を探求しつづけ、社会への視点を作品を通じて表現し、新たな価値を社会に表現する人です。

これまでの常識に全くとらわれない思考や表現がアーティストには求められ、なによりもフレキシビレティが必要です。

以上を総括しますとパターン化され具合(型にはまり具合)の度合いは

システム思考 > デザイン思考 > アート思考

と言った所でしょうか?

結局の所、以上の3つの思考法に優劣がある訳ではなく、直面する課題や、プロジェクトの性格により、どの思考法が適しているのか異なりますので、使い分けが必要だと考えます。

大阪工業大学

研究支援・社会連携センター

シニアURA

北垣和彦

 

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