中小製造業にとってのDXとは
2021年5月4日
遅れる日本の中小製造業におけるDX化
日本の産業構造を考えた際に、製造業は、サービス業に逆転されたとは言え、日本経済のGDPの約20%を占める基幹産業である事には変わりはありません。
製造業分野において、大企業はDX展開でも昔から工場のスマート化に着々と取り組んできましたが、中小製造業の取り組みは遅れているのが、現実です。
工場のスマート化には多額の投資が必要であると考えられて来ました。一方で、5GやIoTにより、高い技術を用いたDXの実現が低コストで取り組めるようになって来ています。
又、下図に示すようにIT化推進している企業の方が、売上・利益ともどの業種でも高い傾向にあります。
中小企業庁のHPより引用:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b2_2_2_1.html
課題は投資資金よりも、製造プロセスとデジタル活用の両方に知見を持つ人材の確保です。
工場のDX化とは具体的に何をするのか?
まず重要なのは、データーです。工場の中にはあらゆる製造装置や測定機器が溢れていますが、それらにセンサーを取り付けて、データー収集をできるようにすることがDX化には必要です。
製造装置の話をすれば、いわゆる工作機械等は、動かせばモータが稼働し、設備が振動したり、モータや切削工具の温度が上がったりします。
いままでは現場の人が経験と勘で製造装置の状態変化に応じた対応を行った来ましたが、これらの設備補修を装置に取り付けられたセンサーからのデーターによって行う事が、まずは考えられます。
データーを集めた後にすべき事は、データーの分析です。
データーの分析に必要なのが、データーサイエンスです。
製造業においても顧客ニーズは、多様化している上に、人手不足が深刻になったいますので、データー分析による生産スケジュールの最適化や品質の向上が必須となっています。
品質向上には最近ではAIによる画像認識が導入されつつあります。
最初の第一歩を踏むために
これらの抽象的、一般的な話をしても中小企業の皆さんはでは、まずDXは何から始めたらよいかわからないという方も多いでしょう。
そんなお会社へのおすすめは、Google ドライブの活用です。
Google ドライブは、2012年から開始されたGoogleが提供するサービスです。
Googleのクラウドストレージを使用する事が出来て、ファイルをアップロードして自分で管理ができます。
Google ドライブ上のファイルはブラウザで見れるようになっています。
アプリについては、OfficeのWordに相当するGoogle ドキュメント Excelに相当するGoogle スプレッドシート等が提供されています。
まずはGoogleスプレッドシートを活用した社内のデーター共有から始められる事を推奨いたします。
Google ドライブを日常的に使用されている方にとっては、「なんでそんな基本的な説明をするの?」と思われたかもしれません。
一方で、私は時々、中小企業さんからも色々と相談を受ける事がありますが、案外とGoogle ドライブを知らない社長さんが多かったりします。
従って、まずは中小企業にとってDXの導入はとか大上段に構えるのではなく、まずはGoogleドライブの社内活用から始められたらいかがでしょうかと提案させて頂いている訳です。
まずGoogle ドライブの社内でのデーター共有が定着してきた場合、次にIoTをどう活用するか?
IoT導入と言えば、難しそうに聞こえますが、これも今の世の中、実に簡単なツールが準備されています。
おすすめの一つがSONYが販売しているIoT教材のMESHです。
MESHは、つくれる、学べる、楽しめるアイデアを形にできる IoT ブロックです。
MESHはそんなに高くないですし、簡単なので、MESHを使って工場内をIoT化の実験をする事を、まずはおすすめします。
次のステップについて
Google ドライブで情報共有できるようになった。そしてMESHを導入してIoTの概念も分かってきたとなれば、次はどんなステップを歩めばよいでしょうか?
ヒントになる会社が愛知県にあります。
自動車部品等を製造している旭鉄工です。
旭鉄工は、自社で開発した生産ラインに手作りで監視システムを構築しています。
やり方は極めて簡単で、秋葉原で数百円で売っているようなフォトセンサーをパトライトにガムテープで取り付けるような手作りIoTです。
IoT普及の背景には電子部品や電子デバイスが急激に価格が下がっているコモディティ化があります。
即ち、現代においては、あまりコストをかけずとも手軽にIoT化できるように、なってきているのです。
更に重要なDX人材の確保
IoT化は低コストで実現できる事は、ご理解頂けたかと思います。
以上の説明は実現するのには、そんなに難しい話ではありません。
しかし、一方で、中小企業の現実から言えば、日頃の業務に追われ、こんなことでも中々、実行できなかったりします。
又、新たにIoT化できる人材を確保しようとしても、難しかったりします。
DX時代においては、ますますDXに対応した人材確保が重要となりますが、そんな人材は確保が難しいわけです。
弱者が強者に勝つ必須条件。それは柔軟性とスピードです。
又、事業は人なりと言います。
自分たちは、弱者だと感じている中小製造業の社長の皆様、ぜひパラレルキャリアで、DX時代に対応可能な優秀な人材を確保しませんか?
大阪工業大学
研究支援・社会連携センター
シニアURA
北垣和彦