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技術革新と政治経済の関係

2021年5月20日

投稿者: 北垣和彦

はじめに

このテーマは筆者にとっては大変興味あるテーマなのですが、体系化するには、あまりに膨大な作業となるため今回はそのさわりだけ考察したいと思います。

下表のまとめに沿って考察していきます。

 

インダストリー1.0

インダストリー1.0 即ち第一次産業革命は、1760年代にかけてイギリスで起こりました。

イギリスで、なぜ世界最初の産業革命が始まったのか、その要因を整理してみましょう。

ご存じのとおり、当時のイギリスは世界の覇者として、世界中に多くの植民地を持っていました。従って、石炭、鉄、綿花等の資源が豊富でした。

またイギリスでは、農業革命により多くの農民が土地を失い、農村部の余剰労働力が大量に都市部に流れ込んできていました。

このようにイギリスでは資源と労働力が当時豊富であったという背景があります。

そこに技術革新が起こります。

ニューコメンにより発明され、ジェームズ・ワットにより改良された蒸気機関

ハ―グリーヴズのジェニー紡績機、アークライトの水力紡績機等々・・・

これらの技術革新により、イギリスでは綿工業が盛んになるとともに、蒸気船や蒸気機関車による交通革命が起こります。

株式会社の起原は東インド会社にその発端が見受けられますが、株式に象徴される資本主義と技術革新により、産学革命が生じ、物質的な豊かさを求めて人類は突き進む事になりますが、都市への人口集中、労働争議、環境汚染等、今日につながる社会的な問題もこのころから顕著になって来ます。

 

インダストリー2.0

第二次産業革命は1865年頃から始まったとされており、最初に産業革命が起こったイギリスに加え、ドイツ、フランスと言った欧州諸国さらに米国も加わって欧米工業国の台頭が起こります。

インダストリー2.0を牽引した技術革新は、電気、化学、石油、鉄鋼と言った分野でした。

いわゆる大量生産・大量販売が本格化した時代です。

一方で、資本主義による大量生産・大量販売は時には行き過ぎた生産拡大を生む事により、景気循環サイクルが生まれやすくなります。

そこでサイクルが低迷期に入れば、新たな市場を求めて、侵略戦争が起こりやすくなり、帝国主義が頭をのぞかせ、先の第二次世界大戦の原因を産み出す事になります。

この頃の技術革新を振り返ってみましょう。

まずは、トーマス・エジソン、ニコラ・テスラ、ジョージ・ウェスティングハウス等による電気工学の大きな進展がありました。

製鉄においては、ベッセマー法、ジーメンス平炉といった技術革新が起こりました。

又、生産プロセスにおいても自動車王 フォードによるベルトコンベアによる生産方式が導入される事により、大量生産・大量販売時代を下支えする事になります。

 

インダストリー3.0

第三次産業革命の概念は、2011年にジェレミー・リフキンが著書『第三次産業革命―原発後の次代へ、経済・政治・教育をどう変えていくか」からその概念が広がりました。

第一次産業革命や第二次産業革命と比較して、漠然感がありますが、端的に言ってしまえば、IT革命でしょう。

知価革命と呼ばれる側面もあります。

第三次産業革命において、いわゆるIT系企業が台頭してきましたが、IT系企業は従来企業と異なり、あまり多くの資本を必要としません。

従って、IT系企業が株式上場すると、膨大な余剰資本を持つことになり、余剰資本を用いた再投資や、M&Aにより、急成長するIT企業が続出し、中にはGAFAのような中央政府をも凌駕する影響力を持つビッグテックと呼ばれる企業が出現する事になりました。

象徴的な出来事も起こりました。

ビットコインを代表とする暗号資産の出現です。

金等の裏付け資産もなく、政府保証もない架空資産の総資産額が100兆円レベルに達しています。

まさしく現代版の錬金術です。

ビットコインは大幅に価格変動するので、通貨と呼べませんが、FACE BOOKが提唱するリブラ等は非政府機関が政府と同等以上の信用創造ができてしまう、社会の根底を覆しかねない事象です。

暗号資産にはブロックチェーン技術が用いられますが、これは分散型ネットワークを構成する世界中の複数のコンピューターに(すなわち誰でも参加できます)暗号技術を組み合わせる事により、取引情報等のデータを同期して記憶する技術です。

ブロックと呼ばれる一定期間の取引データをまとめたものを、複数のコンピューター同士で検証し合います。

各ブロックは、連結されたブロックの一つ前のハッシュ関数により計算されたハッシュ値を持っており、この値をさかのぼることで、つながりを辿ることができる仕組みになっています。

そして検証後の正しい記録をチェーンのようにつないで蓄積していきます。

ハッシュ関数とは、入力されたデータに一定の手順で計算を行い、入力値の長さによらずあらかじめ決められた固定長の出力データを得る関数の事で、ハッシュ関数で得られた値がハッシュ値です。

即ち改ざんするとハッシュ値が変わってしまうので、改ざんしたと分かるわけです。

どこかのコンピューターでデータを改ざんしても、他のコンピューターとの多数決によって正しい取引データが選ばれるので、記録の改ざんを防止できるため注目されています。

分散して管理しますので、中央集権に頼る必要がない、即ち脱政府的な技術であると言えます。

従って、ブロックチェーン技術には世の中の仕組みを根底を覆してしまうかも知れないパワーを秘めているといえるでしょう。

 

インダストリー4.0

インダストリー4.0が最近注目されていますが、いまいち、インダストリー3.0とどう異なるか、分かりにくく感じられているのではないでしょうか?

インダストリー1.0~3.0は歴史を振り返った上での現象を分析した上で、定義されているのに対して、インダストリー4.0は今後、このような未来にしたいというグランドデザインが含まれており、1.0~3.0とは意味が異なっているので、分かりにくくなっています。

2020年度のダボス会議(世界経済フォーラム)ではグレートリセットがテーマになりましたので、インダストリー4.0もグレートリセットが実現されるのでしょうか?

インダストリー4.0とデータサイエンスという過去記事で、インダストリー4.0はトヨタ生産方式をIoT化している側面がある事を記述させて頂きました。

一般的にはインダストリー4.0はIoT、ビッグデータ、AI、ロボティクスの四大要素があると理解されています。

下図は総務省がまとめたインダストリー4.0を迎えるにあたっての企業がAI・IoTの利活用を進める上での課題を一部の国別にまとめたものです。

この図から分かります通り、日本企業がインダストリー4.0を迎えるに当たり、日本企業が他国と比較して、懸念しているのは、組織風土、資金調達環境、ビジネスモデル構築と行った点です。

日本が、諸外国に対して、インダストリー4.0で後れを取らないようにするために、取り組まなければならない課題は多そうです。

企業がAI・IoTの利活用を進める上での課題

 

総務省HPからの引用

大阪工業大学

研究支援・社会連携センター

シニアURA

北垣和彦

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