TOC理論とペーパレスそして非製造業の生産性の向上
2021年6月15日
TOC理論とは
TOC理論(Theory Of Constraints)とはイスラエルの物理学者であるエリヤ・ゴールドラット博士が提唱した理論です。
この理論は「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」という小説で紹介されており、17年間 翻訳が禁じられた いわくつきの一冊!という文言が帯になっています。
TOC理論は主に生産管理・改善のための理論体系ですが、生産管理以外のあらゆる場面にその理論が適用可能な汎用的かつ普遍的な理論になっています。
この理論の基本コンセプトは、あらゆる工程にはボトルネックとなる工程が存在しており、それが全体のスループット(生産量)を制約しているというものです。
制約条件の理論とも言われています。
この理論の普及のおかげで、米国における製造業の生産性は飛躍的向上したと言われています。
TOC理論導入のための最初の第一歩
TOC理論導入の肝はボトルネックの発見と解消です。
ではボトルネックを発見するためには最初の第一歩として何をする必要があるでしょうか?
それは定量化と見える化だと考えます。
ボトルネックを発見するためには、工程毎にスループットを定量化する必要があります。
又、定量化しただけでは不十分であり定量化した数字を見える化する必要が出てきます。
見える化のポイントは関係者全員が最新情報をオンデマンドに、すぐに見えるようにする事です。
そのために、状況が変わるたびに、紙に印刷していたのでは意味がないので、ペーパレス化が必要になります。
非製造業以外へのTOC理論の展開
非製造業以外にもTOC理論を導入すれば、生産性の向上が図れます。
例えば、筆者が病院業務の生産性向上に関わった際に、ある検査の検査装置の稼働率を向上し、検査数の増加を行うために、ボトルネックになっていたのは実は衣服の着替えであり、高額な検査装置や検査技師の数を増やさなくても、単に更衣室を増やすだけで良いという事を発見した事があります。
TOCの考え方は大学における研究活動にも有効です。
大学等において論文を書く場合、論文を書く行為をいくつかの工程に分割し、どの工程がボトルネックになっているかを発見し、ボトルネックを解消するために、例えば、一部の作業を外注する事を検討しておいたり、長期の発注リードタイムが必要な研究資材を早めに注文したりする事でも論文作成の生産性の向上は可能となります。
働き方改革とTOC理論
日本の生産性は低いとされています。
日本の組織は忖度と同調圧力に満ちており、上層部の思い付きで、効果がないと分かっている事をやり続けてしまう風土も一つの原因していると考えています。
業務プロセスを分解し、定量化、見える化してボトルネックを発見し、なんでもかんでも手を出すのではなく、まずはボトルネックを解消する事に集中する事により、ボトルネックが解消されます。
次に、今度はまた異なる工程がボトルネックになるので、又、新たなボトルネック解消に集中して取り組む。
これを繰り返していけば、残業をしなくても、どんどん生産性が高くなり、働き方改革が実現すると思います。
大阪工業大学
研究支援・社会連携センター
シニアURA
北垣和彦