大学の研究シーズと社会実装
2022年1月8日
意外に大きなR&D市場
大学に身を置く者として大学の研究は基礎研究を重視すべきか、それとも応用研究を重視すべきかと悩む事があります。
一方で、大学業界を観察してみて、気が付いた事があります。
R&D市場というのは案外、大きな市場であり、この市場で雇用されている多くの人がいる事を。
無駄だと思われている事が、実は無駄ではないという事があります。
資本主義の本質は、商品でもサービスでもそれがお金を介して、循環していく事で、人々の雇用が生まれ、価値が創出されて行きます。
研究開発を通じて多くの雇用が生まれ、お金やモノの循環が生まれているので、たとえある研究開発の成果が実用化されなかったとしても資本主義における富の循環に貢献していると言えるのではないでしょうか?
R&D市場は大きい訳ですから、当然、R&Dアウトソーシングにビジネスチャンスを見出す企業が出てきます。
R&D市場規模を算出するのは難しいので、間接的にアウトソーシング市場の規模感から推測して頂くために、株式会社 グローバルインフォメーション社の研究開発(R&D)アウトソーシングサービスの世界市場:2021年~2025年の概要を引用させて頂きます。
引用ーーーーここから
世界の研究開発(R&D)アウトソーシングサービスの市場規模は、2021年から2025年の間に72億2000万米ドル成長し、予測期間中は8%のCAGRで成長する見込みです。
同市場は、企業による世界の人材プールへのアクセス増加、研究開発サービスのアウトソーシングが費用効果の高いソリューションである点などによって牽引されています。
当レポートでは研究開発アウトソーシングサービスの世界市場の全体的な分析、市場規模と予測、動向、成長要因、課題、および約25のベンダーをカバーする分析を提供しています。
ーーーー引用 終わり
産学連携はどうあるべきか?
元々、産業界に居た筆者は企業に在籍した際に、そんなに大学に応用研究に期待していた訳ではありません。
特定分野の応用研究、特に技術開発においては企業と大学ではそのリソースに大きなギャップが存在しています。
一方で、企業は短期的な成果や利益を求められるので、時間のかかる研究テーマをなかなか着手できないという事情があります。
企業の立場から大学の研究シーズを眺めてみればたまに事業化に結び付きそうなシーズが見つかる事があります。
企業と大学の間に存在するGAP
これは、企業と大学の両方に身を置いた私として痛切に感じるギャップが存在していると考えています。
まずは時間軸に対するギャップです。
企業はともかく早く商品化や事業化をして稼がないといけないので、せっかちです。
共同研究等においてもオンデマンドでスピードが求められます。
それに対しまして、大学は学生中心の時間軸で回っていますし、教員が指導しながら学生が共同研究に参加するのが通常ですから、学生の卒論テーマに合わせた一年サイクルでしか共同研究にしても出来ないのが通常です。
又、大学は時間のかかる基礎研究に取り組んでいる場合が多く、「研究は時間がかかるものだ」という基本概念が大学の研究者にはあります。
又、研究に関するスコープに関しても企業と大学間にはギャップが存在しています。
企業は大学には色々な学部や学科があり、色々な技術力を持つ研究者がいるので、大学はなんでも開発できるはずと思いがちです。
しかし現実には、大学教員は多忙ですし、出来る事は限られています。又、企業のような組織的な活動による役割分担のシステムがないので、大学単独で商品開発するという事には無理があります。
企業は大学に関する理解に乏しいし、大学も企業に関する理解が乏しいのが現状ですので、産学連携を真に進めて行くには、まずは相互理解からスタートする必要があると考えます。
大阪工業大学
研究支援・社会連携センター
シニアURA
北垣和彦