ガザミ(ワタリガニ)は、古来より日本において食用として親しまれてきたカニの一種である。特に30cmほどのサイズのガザミは高級食材として評価され、近年の日本の食文化の多様化に伴い、その需要はますます高まっている。しかしながら、ガザミの漁獲量は年々減少しており、安定した供給のためには効率的な養殖技術の確立が求められている。ガザミの寿命は2~3年と短く、効率的な養殖技術が確立されれば、安定した水産資源としての供給が可能である。一方で、現在の養殖方法では、種苗生産の難しさや、共食い、環境依存などの課題が存在し、これらを克服するための新たなアプローチが求められている。
本研究では、ガザミ養殖の効率化に向け、ICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)を活用したデータ駆動型のアプローチを採用する。具体的には、養殖環境に影響を与える多様な因子をデータとして収集・分析し、誰もが適切にガザミを養殖できる次世代の方法を体系化することを目指す。また、インドネシア ハサヌディン大学と伊良部島で蟹漁と養殖を生業としている株式会社蟹蔵と連携し、養殖実験場での共同研究を通じて、現地の知見と日本の技術を融合させた新たな養殖技術の開発に取り組む。