RESEARCH TITLE 【2023年度研究PJ】D-アミノ酸を核とした新たな食と健康の創出に関する研究プロジェクト

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RESEARCHER研究者リスト

研究代表者工学部 生命工学科大森 勇門 准教授

研究分担者

工学部 生命工学科芦高 恵美子 教授

研究分担者

工学部 生命工学科川原 幸一 教授

研究分担者

工学部 生命工学科松村 潔 教授

研究分担者

工学部 生命工学科藤田 英俊 准教授

研究分担者

工学部 総合人間学系教室西脇 雅人 准教授

U oshima

研究分担者

工学部 生命工学科大島 敏久 客員教授

研究分担者

大学院 知的財産研究科角田 全功 教授

研究分担者

工学部 生命工学科産業技術総合研究所近江谷 克裕 客員教授 首席研究員

研究分担者

産業技術総合研究所堀江 祐範 グループ長

OVERVIEW研究課題の概要

我が国が抱える重大な社会問題である超高齢社会において、生活の質(QOL)の維持と向上は健康寿命の延伸にとって重要な課題である。本プロジェクトでは「アミノ酸」、特に「d-アミノ酸」に着目した「食」と「健康」に関する研究を精力的に推進していくことで、QOLの維持・向上を目指す。また研究を通して、食品、医薬品、医療機器などのライフサイエンス関連分野で活躍できる人材の育成に寄与する。

ヒトの生体成分の一つであるタンパク質は、l体のアミノ酸によって構成されている。一方でd体のアミノ酸には生理機能はないとされていたが、分析技術の進歩に伴い、ヒトの体内でもd-アミノ酸が生合成されており、様々な生理機能に関与していることが明らかになってきた。またd-アミノ酸は食品にも含まれており、特に発酵食品において高濃度存在し、その生産には乳酸菌が大きく寄与していることを代表者のグループが明らかにしている。しかし、d-アミノ酸の生理機能については不明な点も多く、さらにd-アミノ酸に着目した食品開発も少ないのが現状である。そこで、d-アミノ酸高含有食品の探索と応用、開発した食品の機能性評価、d-アミノ酸の生理機能の解明を多面的・総合的に実施する。

( 1 ) d-アミノ酸高含有食品、高生産微生物の探索と食品開発

d-アミノ酸含有食品と、その生産に関係する乳酸菌の探索と機能解析を進める(大森、近江谷、堀江)。得られた知見を食品の開発につなげる。また超好熱菌由来の酵素をベースとして人工遺伝子のデザインを行い人工d-アミノ酸脱水素酵素を創製し、d-アミノ酸の合成と検出に応用する(大島)。

( 2 ) d-アミノ酸含有食品・ペプチドの機能評価

ヒトを対象としてd-アミノ酸含有食品摂取時の、動脈スティフネス、運動機能などへの影響を測定し、d-アミノ酸食品の個体レベルでの機能評価を行う(西脇)。また疼痛抑制ペプチドのd-アミノ酸置換による疼痛への効果を検討する(芦高)。

( 3 ) d-アミノ酸の生理的機能の解明

d-アミノ酸の生理機能について、神経細胞(松村)、慢性炎症(川原)、小胞体ストレス(藤田)などへの影響を検討する。

( 4 ) 研究シーズの知財化促進

食品企業の知財戦略を牽引した経験による研究シーズと企業ニーズの有機的結合を図り、特許取得や企業連携などの知財戦略を推進する(角田)

REASON課題実施の根拠

・学会・業界における位置づけ

d-アミノ酸研究は、その分析が困難であったこともあり相対的に遅れていた。しかし様々な測定技術が開発され、生体内におけるd-アミノ酸の存在と生理機能が明らかになってきている。90年代には神経伝達物質としての機能やホルモンの調節への関与が明らかになった。最近では、腸内細菌とヒトのd-アミノ酸を介した相互作用による免疫システムへの影響、COVID19感染者の血中d-アミノ酸量の減少、シャペロン介在性オートファジーの活性化などが明らかになっている。また、d-アミノ酸を活用した食品の開発が産学連携事業として実施され商品化もされている。このような大変興味深い成果が報告され、社会的な注目度も高まりつつあり、今後さらに大きな産業への展開が期待される分野の一つと言える。

・環境分析・社会的意義・将来性

超高齢社会を生きる人々にとってQOLの維持・向上は重要な課題である。d-アミノ酸を利用した健康に資する新たな食品の開発はQOLの維持・向上に貢献できるものと考える。本プロジェクトには、d-アミノ酸解析、酵素の機能解析、細胞や個体(ヒト)レベルでの機能評価を行うことのできる人材が集結しており、d-アミノ酸の食品における機能、代謝、栄養などの食と健康に関する基礎と応用研究を強力に進めることができ、この分野の発展への貢献が期待できる。

・独自性

大森らはd-アミノ酸の解析技術を確立しており、また大島らとアミノ酸関連酵素の機能解析を多数実施している。近江谷、堀江らは乳酸発酵茶に関係する乳酸菌の単離とその解析を実施している。また大森らは乳酸菌や酵母を利用した食品開発も実施しており、基礎研究から食品開発へのスムーズな移行が期待できる。西脇らは動脈スティフネスの測定を通して多くの食品の有効性を明らかにしている。芦高らは神経障害性疼痛を抑制するペプチドを発見し、その効果を検証するための方法を確立している。川原らは細胞病態モデルを用いて、糖やタンパク質の炎症への効果を検証し機能性成分を見出している。松村らはマウス個体や組織、細胞レベルでの解析を多数実施し、新たな発熱のメカニズムを明らかにしている。藤田らは小胞体ストレス応答におけるエネルギー代謝調節を解析するための系を確立している。d-アミノ酸生理機能の解明と検証により、d-アミノ酸含有食品の有用性を明らかにすることが可能である。

EFFECT期待効果

期待される研究成果

・論文数

3年での総数:約60報 (2020年、2021年、2022年のメンバーの総実績数47報、本プロジェクトによる成果の加速を考慮して算出)

・学会発表予定

国内学会 (日本農芸化学会、d-アミノ酸学会、日本生化学会、日本分子生物学会、日本神経学会、日本生理学会、日本血栓止血学会、日本救急医学会、日本疼痛学会、日本体力医学会、日本運動生理学会など)、国際学会 (Society for Neuroscience, International Association for the Study of Pain, American College of Sports Medicine, Experimental Biologyなど)

・ジャーナル投稿予定

Biochimica et Biophysica Acta,  J. Biosci. Bioeng.,  Biosci Biotechnol Biochem,  Process Biochemistry,  J Biol Chem,  Sci Rep,  Bio Rep,  eLife,  Eur J Neurosci,  EMBO J,  Mol Pain,  Nutrition,  PLoS One,  Eur J Appl Physiol,  J Physiol Sci,  IEEE Sensors Journal, Sensor,  Analyst  など

・特許出願

下記の特許申請が期待できる。

d-アミノ酸を高含有させた機能性表示食品 (工大ブランド食品として商品化)

d-アミノ酸の酵素合成法

酵素を用いたd-アミノ酸の検査技術

糖尿病性神経障害疼痛を抑制し、生体での分解に耐性を示すペプチド

 

期待される知財の成果

本プロジェクトでは企業において知財戦略を牽引した経験を有する研究分担者(角田)との連携を通して、プロジェクトで得られた研究成果を特許出願などに結び付けていく。また角田は味の素株式会社の知的財産部に勤務していた経験をもち、まさにアミノ酸、食品などの知財戦略の立案・推進に携わってきた人材であるため、本プロジェクトの内容に適任であると考える。

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