RESEARCH TITLE 【2024年度研究PJ】 刺激に応答する触媒を用いたバイオマス化合物の電気化学的物質変換

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RESEARCHER研究者リスト

K-hirahara

研究代表者工学部 応用化学科平原 将也 准教授

研究分担者

工学部 応用化学科

 福嶋 貴  特任講師

OVERVIEW研究課題の概要

本プロジェクトでは当初、バイオマス化合物の高選択・高効率物質変換を主たる目的としていた。具体的には代表者が開発した「光」や「熱」に応答して自在に反応場を変化させることができる「刺激応答性触媒」を用いて、木質バイオマスから得られる5-ヒドロキシメチルフルフラール (HMF) の電気化学的な酸化反応および還元反応を目的とした。しかしながら用いた錯体の触媒活性著しく低かった。

用いた錯体の類縁体の刺激応答性および電気化学的挙動を精査した結果、光と電気化学的な刺激に応答するスイッチとしてふるまうことが明らかとなった。 

図1に錯体の外部刺激応答性を示す。錯体1 にアルカリ性条件下で光照射し、その後酸を加えると、体2 が定量的に得られた。一方、中性条件下ではその光応答は可逆的であり、錯体1 および2 の混合 物が得られた。 

REASON課題実施の根拠

錯体1の電気化学特性をサイクリックボルタンメトリーにより評価したところ、水溶液で可

逆な酸化還元応答を示した。一方、錯体2 は, 2 電子・2 プロトンが同時に移動するプロトン共役電子移動を示し、その酸化還元電はpH に強く依存した。この酸化還元電位の pH 依存性は既報の類似錯体と同様の振る舞いであった。しかしながら、掃引を重ねていくと、錯体2 由来の酸化還元応答が減少し、錯体1 由来の酸化還元応答が増加していった。この変化は、酸化反応を駆動力とした構造変化を意味すする。興味深いことに、この酸化還元を駆動力とした構造変化は強いpH 依存性を示した。pH6 においてはその速度定数が一桁上がる一方、pH 8 では速度定数が一桁減少した。また、この電気化学的な構造変化と光反応による構造変化は可逆的に観測された(図3)。錯体1 の溶液に光を照射すると、0.5 V に錯体2 由来の酸化波が観測され(図3B)、定電位電解をおこなうと

0.5 V の酸化波は消失した(図3C)。この変化は繰り返し観測され(図3D,E)、本錯体が複数の刺激に応答する分子スイッチとしてふるまうことが実験的に示された。

図1. ルテニウム錯体1, 2 の光及び電気化学的刺激に対する応答

図2 pH7における錯体2の酸化還元応答。錯体1, 2の酸化還元電位はそれぞれ0.59V, 0.73 V

図3. Cyclic voltammograms of 1(RuII) (0.5 mM) in mixed aqueous solution (pH= 7.4) under external stimuli. (A) Before light irradiation, (B) after light irradiation at 530 nm, (C) after bulk electrolysis of solution (B) at 0.6 V and 0.0 V vs Ag/AgCl, (D) after light irradiation to solution (C) at 530 nm and (E) after bulk electrolysis of solution (D) at 0.6 V and 0.0 V vs

Ag/AgCl. Scan rate: 1 V/s.

EFFECT期待効果

本研究において見出された分子スイッチは、既報のアゾベンゼン、スチルベン分子モ ータといった有機物由来の分子スイッチ 1 と異なり、光だけでなく、酸化還元にも応答してその構造を変化させることができる。加えて、ルテニウム錯体は触媒や抗がん剤への応用が可能なため、本研究は複数の刺激に応答する機能性分子の創製において大きく貢献できると期待できる。 

・論文数

2024年度発表論文4報 (うち、責任著者2報)

・学会発表予定

日本化学会春季年会にて口頭発表

【参考文献】

(1) J. Wang and B. L. Feringa, et al., Science, 2011, 331, 1429–1432

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大阪工業大学 研究支援社会連携推進課

大阪市旭区大宮5丁目16-1 (大阪工業大学8号館4階)
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