RESEARCH TITLE 【2024年度研究PJ】D-アミノ酸を核とした新たな食と健康の創出に関する研究プロジェクト

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RESEARCHER研究者リスト

Omori

研究代表者工学部 生命工学科大森 勇門 准教授

研究分担者

工学部 生命工学科芦高 恵美子 教授

研究分担者

工学部 生命工学科川原 幸一 教授

研究分担者

工学部 生命工学科松村 潔 教授

研究分担者

工学部 生命工学科藤田 英俊 准教授

研究分担者

工学部 総合人間学系教室西脇 雅人 准教授

U oshima

研究分担者

工学部 生命工学科大島 敏久 客員教授

研究分担者

大学院 知的財産研究科角田 全功 教授

研究分担者

工学部 生命工学科産業技術総合研究所近江谷 克裕 客員教授 首席研究員

研究分担者

産業技術総合研究所堀江 祐範 グループ長

OVERVIEW研究課題の概要

我が国が抱える重大な社会問題である超高齢社会において、生活の質(QOL)の維持と向上は健康寿命の延伸にとって重要な課題である。本プロジェクトでは「アミノ酸」、特に「dアミノ酸」に着目した「食」と「健康」に関する研究を精力的に推進していくことで、QOLの維持・向上を目指す。重要な生体成分であるアミノ酸には、l体とd体、2つの鏡像異性体が存在するが、このうちd体のアミノ酸には生理機能はなく、生体内にも存在しないと長年考えられてきた。しかし近年ヒト体内からも発見され、かつ様々な生理機能に関与していることが明らかになってきた。またdアミノ酸は食品、特に発酵食品において高濃度存在しており、その生産には乳酸菌が大きく寄与していることを代表者のグループが明らかにした(Mutaguchi Y. Ohmori T et al., SpringerPlus, 2:691, 2013)。しかし、dアミノ酸の生理機能については未だ不明な点も多く、またdアミノ酸に着目した食品開発も少ないのが現状である。そこで、dアミノ酸高含有食品の探索と応用、開発した食品の機能性評価、dアミノ酸の生理機能の解明を多面的・総合的に実施する。また研究を通して、食品、医薬品、医療機器などのライフサイエンス関連分野で活躍できる人材の育成に寄与する。

REASON課題実施の根拠

dアミノ酸」を核とした下記の研究成果に関連して、論5と学会発表29(招待講演1)を実施した。また、医薬品や食品企業の知財戦略を牽引した経験による研究シーズと企業ニーズの有機的結合の推進(角田)により特許出願予定1件、科研費 (研究代表4件、継続含む)、外部資金(5)企業や大学との共同研究(3)つなげることができた。

 

(1) dアミノ酸高含有食品、高生産微生物の探索と食品開発

dアミノ酸高含有食品、高生産微生物の機能解析(大森、近江谷、堀江)

研究背景と目的】既存の発酵食品のうちdアミノ酸を高含有する製品を探索し、かつそれらの発酵食品中でdアミノ酸生産に関係している乳酸菌の単離と機能解析を進めていくことで、dアミノ酸含有食品の製造につなげることを目的とする。本プロジェクトではdアミノ酸含有食品、特にパン製造に応用するため、奈良県川上村水源地の森より単離した酵母Saccharomyces cerevisiae OIT-KS16株の製パン性について検討した。

【研究方法】酵母S. cerevisiae OIT-KS16株を麹汁培地にて培養し、得られた菌体を用いてパン生地を作製し発酵能(発酵後の体積変化)と比容積(焼成後の体積と重量の比)を測定することで製パン性を検討した。パン生地は無糖生地、低糖生地、高糖生地とした。

【研究成果と考察・結論】添加するショ糖濃度の異なる3種類のパン生地における酵母S. cerevisiae OIT-KS16株の製パン性を検討した結果、低糖生地において市販パン酵母と同程度の能力を示すことが明らかになった。また無糖生地や酒類への応用のため、2-デオキシグルコース含有培地でのマルトース資化性株の育種も行ったが、現状資化性株の獲得には至っておらず引き続き育種を進めていく。今後、OIT-KS16株を用いたdアミノ酸含有パンの試作を予定している。

・学会発表:1 (日本農芸化学会)

・競争的資金、共同研究先企業:川上村大学連携事業補助金(大森 代表2024年度)R6奈良県産官学連携による魅力ある地域づくり支援補助金(大森 代表2024年度)

 

アミノ酸脱水素酵素の機能解析とアミノ酸合成・検出への応用(大島、大森)

研究背景と目的】血中のアミノ酸濃度の変化は様々な疾病との関連が指摘されており、バイオマーカーとしての利用が期待されている。例えば、ある種のガンにおいては血中l-Arg濃度が上昇すること、COVID19感染者においては血中d-Ala濃度の減少が報告されている。これら血中アミノ酸を簡便かつ迅速に測定する方法として、アミノ酸脱水素酵素の利用が考えられる。またアミノ酸脱水素酵素は、アミノ酸の分解反応だけでなく合成反応も触媒することから、アミノ酸の工業生産への利用にも期待できる。以上のようにアミノ酸の検出と合成に応用可能なアミノ酸脱水素酵素をゲノムマイニングにより探索し、その機能解析を実施した。

【研究方法】ゲノム情報データベースの情報からアミノ酸脱水素酵素の推定遺伝子を探索し、それらの遺伝子を含むプラスミドを合成、合成したプラスミドにて発現用大腸菌を形質転換し大量発現系を構築した。発現させた目的酵素の酵素学的特徴を、分光光度計を用いて解析した。

研究成果と考察・結論l-Argl-Alal-Glul-Trpl-Leuのそれぞれを基質とする5種のアミノ酸脱水素酵素について大量発現系を構築し、その機能解析を行った。特に超好熱菌由来のl-Glu脱水素酵素については、本菌がもつ4つの酵素の特徴を明らかにした。そのうち一つの酵素が反応温度によって基質特異性が変化する非常に珍しい性質を持つことを見出し、現在論文投稿中である。l-Arg脱水素酵素についてはPseudomonas属以外の菌種がもつ本酵素の発現と解析を行い、Pseudomonas属細菌がもつ酵素と異なり、NADP以外にNADも補酵素とすることを見出した。この性質は産業応用時にコストダウンにつながる可能性がある。また昨年度ゲノム情報から見出した人工dアミノ酸脱水素酵素の創製への応用が期待できるmesoジアミノピメリン酸脱水素酵素について発現系を構築し機能解析を行った。既存酵素と同じく、mesoジアミノピメリン酸に特異的であり、dアミノ酸への活性は一切認められなかった。そこで、dアミノ酸脱水素酵素へ遺伝子工学的に改変することを目指し、現在PCRを利用した部位特異的変異を導入中である。

・論文数:1

1. Kawakami R, Takami N, Hayashi J, Yoneda K, Ohmori T, Ohshima T and Sakuraba H, Photon Factory Activity Report 2023, 41, 2024

・学会発表:3 (日本農芸化学会中四国支部、日本農芸化学会、日本生化学会近畿支部例会)

・学会発表予定:1 (日本農芸化学会)

・ジャーナル投稿中:1 (Extremophiles)

・競争的資金、共同研究先企業:科研費基盤研究C (大島 代表2024-26年度)

 

(2) dアミノ酸含有食品・ペプチドの機能評価

dアミノ酸含有食品摂取時の生理機能への影響(西脇)

【研究背景と目的】石鎚黒茶は愛媛県西条市で古くから伝わるまぼろしのお茶であり、日本で4つしかない後発酵茶の1つであり、dアミノ酸を豊富に含むことが知られている。一般に、糖負荷を行うと、血糖値とともに、動脈スティフネスの指標である上腕足首間脈波伝播速度(baPWV)が増大することが知られている。本研究では、中年者に対する一過性の石鎚黒茶の摂取がブドウ糖負荷後の動脈スティフネスに及ぼす影響について検討することを目的とした。

【研究方法】被験者は、健康な中年男女8(男性6人、女性2人、39.2 ± 5.5)とした。同一被験者に対し、日を変えて、1) C条件(対照条件、白湯摂取)2) G条件(‘緑茶摂取)3) IK条件(石鎚黒茶摂取)3つの条件を無作為の順序で行った。30分間の安静後、3条件いずれかの飲料200 mLを、その後、75 gブドウ糖液250 mLを、それぞれ摂取させた。ベースライン、およびブドウ糖負荷3060分後に血糖値とbaPWVを測定した。

 

【研究成果と考察・結論】血糖値は、3条件ともにブドウ糖負荷30分後および60分後に有意に上昇した。baPWVは、C条件とG条件で有意な増大が認められていたものの、IK条件で有意な増大は認められなかった。以上の結果から、中年者に対する一過性の石鎚黒茶の摂取は、ブドウ糖負荷テスト後の動脈スティフネス増大を抑制することが示唆された。

EFFECT期待効果

期待される研究成果

ストレス応答配列を有するルシフェラーゼレポーター構築体を用いて、安定発現細胞株の樹立に成功した。得られたクローン細胞に小胞体ストレス誘導剤を添加した結果、ルシフェラーゼ活性の有意な上昇が認められ、小胞体ストレスの定量的評価系として有用であることが示された。今後、dアミノ酸を添加することで、小胞体ストレス応答における dアミノ酸の影響の解析を試みる。以上の結果から、小胞体ストレスを定量できる実験系の確立を行った。今後、dアミノ酸による小胞体ストレス応答の制御作用の有無を詳細に検証可能となった。


期待される知財の成果

・論文数 1報、Aikawa S, Hiraoka T, Matsuo M, Fukui Y, Fujita H,
Saito-Fujita T, Shimizu-Hirota R, Takeda N, Hiratsuka D, He X, Ishizawa C, Iida
R, Akaeda S, Harada M, Wada-Hiraike O, Ikawa M, Osuga Y, Hirota Y. Cell
Death Discov. 
10:481. 2024

・学会発表 3件、招待講演1 (日本生化学会近畿支部例会、日本生化学会、招待講演:神戸薬科大学)

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大阪工業大学 研究支援社会連携推進課

大阪市旭区大宮5丁目16-1 (大阪工業大学8号館4階)
MAIL. OIT.Kenkyu@josho.ac.jp
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