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ホーム高温高湿環境下の樹脂材が熱刺激電流に与える影響
SDGsの分類
研究テーマ
ナノ・材料
学科の分類
教務部教育センター

高温高湿環境下の樹脂材が熱刺激電流に与える影響 TSCスペクトル可視化解析技術の活用

教務部

教育センター

物性評価技術研究室

吉田福蔵 准教授

熱刺激電流樹脂材活性化エネルギー

電気配線, デバイス素子そして電気機器等の電気絶縁を保持する目的として, 樹脂材は重要な働きを担っている. 現在, 機器の小型化に伴い電界強度・電流密度が増加, その結果, 樹脂材はますます過酷な環境下での使用が要求されている. そこで高温高湿環境下での樹脂材の電気絶縁性を調べるため熱刺激電流(TSC)を計測, TSCスペクトルに与える影響を検討した. 一般にTSCスペクトルが単峰で計測される事は稀であるが, TSCスペクトルの可視化解析技術により, 信号の分離を可能にし, 単一信号の物性量を正確に評価できるに至る.

TSC実験

樹脂材は, エポキシ系で85℃/85%条件下に置き, バイアス時間tb=100(h),バイアス電界強度Eb=10(kV/cm)の処理後, 短絡回路にて昇温速度β=5(K/min)で外部回路に流れる電流を計測した. TSCスペクトルの解析には, TSC単峰を示す下記の基礎式を適用した. 表中のTSCBは, 高温高湿下のTSC, TSCAは基準となる湿度, RHでのTSCスペクトルを意味する.

TSCスペクトルの可視化特性

TSC特性を図1, その可視化特性をそれぞれ図2及び図3に示す. 高温高湿下でのTSCスペクトルは, TSCAに比べ約500(K)以上の高温域で, 電流のエンハンスが確認できる. そして可視化特性から, 両TSCスペクトルは複数の寄与であることがわかる.

図1 TSC特性
図2 TSCAのEt-T特性
図3 TSCBのEt-T特性

活性化エネルギーと拡散定数

図1のTSCスペクトルに可視化解析技術を適用し, 分離した信号を図4及び図4に示す. 両TSCスペクトルは, 4つの信号が確認できた. 分離した信号の活性化エネルギーEt, そしてTSC分離データとアインシュタイン関係式から拡散定数Dをそれぞれ計算した. 図6に活性化エネルギー, 図7に拡散定数の温度分布を示す. 分離信号のEt値の温度特性から, TSCAの3信号(CA1, CA2そしてCA4)とTSCBの3信号(CB1, CB2そしてCB4)は, 0.687(eV), 1.01(eV)そして0.723(eV)の同一起源と考えられる. 拡散定数は, CA4とCB4がわずかに低い値を示すが, すべて10E-11のオーダーである.

図4 TSCAの分離結果
図5 TSCBの分離結果
図6 活性化エネルギーの温度特性
図7 拡散定数の温度特性

電荷量及び超低周波での誘電損率の比較

分離したTSC信号全体(図4と図5)から, 高温高湿下の信号電荷量は, RHに比べ約48(%)の増加であった. 図8(a)から(d), 図9(a)から(d)に赤で示したTSCスペクトルの各電荷量を計算し, 図説中に全体に対する割合を示す. 特に, 高温高湿下における信号CB4(図9(d))は, 信号CA4(図8(d))よりも約17(%)の電荷量の顕著な増加が確認できる. この電荷量の増加があるCB4に関する誘電損率εr”を分離したTSCからの複素誘電率によって計算した. 図10に示すようにTSC計測からは, 超低周波数の特性を与える.湿度RHの信号CA4に比べ, 高温高湿下の影響を受けたCB4の信号は, 信号CA4よりも高周波数側に約2.0倍の誘電損失ピークを示しているのがわかる. このことは, 高温高湿下の影響としてイオン電導が活性化しているものと考えられる.

図8(a) CA1(12.3%)
(b)CA2(14.6%)
(c)CA3(16.1%)
(d)CA4(57.0%)
図9(a) CB1(3.1%)
(b)CB2(12.8%)
(c)CB3(8.7%)
(d)CB4(75.4%)
図10 TSCから計算した誘電損率

論文

「解析技術の展開ーTSCスペクトルの解析ー」(2016)吉田福蔵『「熱刺激電流を用いた材料・デバイス開発の最前線」シーエムシー出版』第10章p.199-218.

研究者INFO: 教務部 教育センター 物性評価技術研究室 吉田福蔵 准教授

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