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ホームオクシモロンの謎―意味の矛盾と伝達効果
SDGsの分類
研究テーマ
人文学
学科の分類
情報科学部情報メディア学科

オクシモロンの謎―意味の矛盾と伝達効果

情報科学部

情報メディア学科

英語学・語法研究室

田岡育恵 教授

反意オクシモロン

オクシモロンとは「小さな巨人」のように反対の意味が同じ対象に適用されるレトリックである.「小さくて大きいものは何だ?」とすれば「なぞなぞ」にもなり得るが,字義通りに考えれば反対語が共起しているのだから矛盾することになる.しかし,実際には意味解釈に支障は来さない.それどころかこのレトリックならではの伝達効果がある.オクシモロンの構造,伝達効果は私の研究テーマの一つである.

反意の共存

オクシモロンの1つ「甲子園は近くて遠い」で考えてみよう.「近い」と「遠い」という反対語が共起しているが,矛盾しない.それは,「近い」と「遠い」のそれぞれ判断される観点が異なるからである.「近い」は物理的距離を表し,「遠い」は,甲子園に出場するのは滅多なことでは無理なので,近づきがたい場所ということで「遠い」となる.これは心理的な距離である.

図1 「甲子園は近くて遠い」の構造

情報の焦点

しかし,「近くて遠い甲子園」は,別に甲子園の距離的近さを言いたい表現ではなく,言いたいのは「遠さ」の方である.「近そうに思われるが,実は違う」ということである.何故なら,情報はより主張したいことが後に来るという情報の焦点後置という原則があり,言いたいことは後の方に来る.これを図示すると図1のようになる.オクシモロンの考察では,一見,対等に示されている反対語の重みが違う.しかし,表面的には1つの対象に反対の形容を対等に用いることで表現を目立たさせ,表現自体を人々の記憶にとどめやすくする効果があると考える.

「今年の夏は夏ではない」

「今年の夏は夏ではない」もオクシモロンである.「夏である」と「夏ではない」が共存し,一見,矛盾する.しかし,このような表現を理解できるのは,違うレベルで「夏」を見ているからである.「コロナ禍で今年の夏1は夏2ではない」において,「夏1」は「1年の区分としての6月,7月,8月」を表す.これに対して,「夏2」は,「夏祭り,花火,賑わうビアガーデンなど,本来,夏に見られる光景が見られるプロトタイプ的夏」を表す.季節はいつかと問われれば「夏1」であるが,夏らしい夏,つまり「夏2」と呼べるような夏であるかと問われれば「夏2」ではない.この場合も言いたいのは,「夏2」ではないということである.これを図示すると図2のようになる.

図2 「今年の夏は夏ではない」の構造

オクシモロンの効用

近年,耳にする「キモ可愛い」もオクシモロンである.「気持ち悪い」と「可愛い」が共存している.しかし,言いたいのは「可愛い」の方である.このように,日常の中でオクシモロンは日々,創造されていく.オクシモロンは,字義通りの意味の文脈における逸脱である.学生にこのようなレトリックの存在を教え,字義どおりでは矛盾する表現のメカニズムを考えさせることは,表面の奥にあるものへの理解に学生を導くという点で重要である.人であれ物事であれ,良い面,良くない面,相反する性質が1つの対象に共存することは多いのだが,それを我々は見逃しがちである.観点の違いで対象の評価は違ってくる.そこに気付かせてくれるレトリックがオクシモロンである.

論文

「オクシモロンの解釈過程について」(2018)田岡育恵『大阪工業大学紀要』63(1)p.29-37.

「オクシモロンの日英語比較研究」(2019)田岡育恵『大阪工業大学紀要』64(1)p.35-41.

研究者INFO: 情報科学部 情報メディア学科 英語学・語法研究室 田岡育恵 教授

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