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SDGsの分類
研究テーマ
ナノ・材料
学科の分類
工学部一般教育科

顕微ラマン-フォトルミネッセンス測定システムの開発

工学部

一般教育科

応用物理研究室

原田義之 教授

顕微分光

 半導体微粒子の光物性研究,および表面増強ラマン散乱(SERS)の機構解明と多機能センサーへの応用を進めるため,これまで顕微ラマン-PL測定システムの開発を行ってきた。本研究で開発したシステムは,共焦点レンズ光学系を基本とする装置本体,焦点距離550 mmの分光器,紫外高感度型冷却CCD検出器,各種レーザー光源,顕微用極低温冷却装置,及び,精密x-y走査ステージから構成される。ラマン散乱,及び,PL測定用の励起光源としては,Nd-YAGレーザー(535 nm, 200 mW) ,He-Cdレーザー(325 nm, 50 mW)を用い,測定はすべて室温で行った。

 物質に光を入射させたとき,物質と相互作用して入射光と異なる波長で散乱される場合,その物理現象をラマン散乱という。入射光と散乱光のエネルギー差は物質内の振動準位や回転準位,あるいは電子準位に相当することから,ラマン散乱測定により,分子や結晶の対称性,面方位,キャリヤ密度,不純物,表面,及び,界面状態等の情報を得ることができる。一方,半導体などの物質に光を入射させた場合,電子遷移により吸収・生成された非平衡電子・正孔対のエネルギーが発光という形で緩和・放出する現象をフォトルミネッセンス(PL)という。それを調べることで,励起子,不純物,および格子欠陥に関する光学特性について多くの知見が得られる。今日,ラマン散乱,及び,PL測定は非破壊・非接触で様々な物質の光学特性を簡易に評価する方法として広く用いられている。

 最近,これら分光測定と顕微鏡を組み合わせた顕微分光法は,半導体微粒子や金属ナノ粒子などナノ材料の光学特性を探る有力な測定手法として注目されている。共焦点レンズ光学系と高倍率の対物レンズを用いた顕微ラマン-PL測定では,入射光をミクロンオーダーのスポットに集光できると共に,その微小領域からの散乱光や発光を高いSN比と空間分解能で検出することができる。通常のラマン・PL測定では試料間での比較が難しく,光学系のずれや励起光の集光度の違い等により,測定の再現性に問題が見られた。本研究では,顕微ラマン-PL測定システムを用いて,試料間のラマン散乱,及び,PL強度の比較や深さ方向や面内方向での強度分布を調べた。これらにより,SERSのより定量的な観測が可能となり,金属ナノ粒子を用いた多機能センサーの開発に役立つものと期待される。

 本システムは,主光学系に共焦点レンズ光学系を組み込むことで,高い空間分解能特性を有している。共焦点レンズ光学系は,使用する対物レンズの焦点と共役な位置にピンホールを配置して,そのピンホールを通った光のみを取り出して,検出する光学系である。

 散乱光を例として,右図を用いて光軸方向での結像と高分解能化について考察する。光源から出た光をレンズで試料に集光し,試料から散乱された光を検出器で観測する場合を考える。試料の光軸方向で観測したい微小領域が対物レンズの焦点位置Bにあるとき,散乱光はレンズ系によりハーフミラーを介してピンホール上に結像し,効率よく通過して検出される。次に対物レンズを光軸方向に動かし,焦点位置A,あるいは,Cとなるように観測位置をずらすと,散乱光はピンホール上でデフォーカスされるために急激に散乱光強度が減少する。このように,光軸方向では対物レンズの焦点位置がピンホールの上でうまく結像するか否かにより,分解能が大幅に向上する。さらに,試料の深さ方向での焦点位置を変化させることで,深さ方向の情報も得られる。一方,面内方向でも,次の理由から分解能が大幅に向上する。試料表面から位置Bと同じ深さの位置Dに焦点を合わせたとき,Dが光軸上にないため,散乱光の結像位置はピンホールからずれる。したがって,焦点位置Bの場合と比べて,急激に散乱光強度が減少することになる。

 Si上に約20μmの幅で,横長の細溝をつけ,その溝の中に粒子サイズ90 nmのZnOナノ粒子を埋め込んだ試料を作製した。本システムの評価のため,この試料に対する2次元PLマッピングの測定を試みた。ZnOナノ粒子が細溝に埋まった位置で強く発光していることがわかる。発光の強弱は粒子サイズや粒子の密集度に依存すると考えられる。このようにZnOナノ粒子の存在する位置を顕微鏡による実像と対比して観測できることがわかった。

Si上の細溝に埋め込んだZnOナノ粒子の顕微PLマッピング像

研究者INFO: 工学部 一般教育科 応用物理研究室 原田義之 教授

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