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ホーム景観に配慮した祇園祭祭礼時の仮設休憩所のデザイン
SDGsの分類
研究テーマ
建築デザイン
学科の分類
ロボティクス&デザイン工学部空間デザイン学科

景観に配慮した祇園祭祭礼時の仮設休憩所のデザイン 折りたたみ,収納,輸送可能な木製テントの開発

ロボティクス&デザイン工学部

空間デザイン学科

建築計画研究室

朽木順綱 准教授

共同研究者

高橋克輝
田川翔太
祇園祭木製テント景観

毎年7月に催される伝統行事,祇園祭においては,「山」や「鉾」と呼ばれる大型の山車を保有する「山鉾町」の各所で,神事や祭事などの様々な催しが行われる。2017年より本研究室で運営協力を行っている岩戸山町もそのひとつであり,2019年においては,「岩戸山」に隣接し,祇園囃子を演奏する「囃子方」が演奏の幕間に休憩や準備を行う休憩所を木製テントで実現することを設計,設営することとなった。計画にあたっては,規模に見合う主要骨格の設計や,構成部材の選定,搬送,組立手順のみならず,山鉾や京都の伝統的景観だけでなく,駒形提灯や露天などの祭礼独特の空間演出にも調和するよう検討,試作を重ねた。

■研究の概要と特色

多くの「山鉾町」では,「会所」とよばれる常設の共有施設が町内に常設的に保有されており,山鉾部材の保管や山鉾保存会の運営に関わる会合のほか,祭礼期間中の町関係者や囃子方らの休憩・待機,祇園囃子の稽古,巡行前の御神体の安置などに利用されている。しかし,岩戸山町は歴史的経緯のなかでこうした「会所」を持たなくなったため,毎年これらの機能を町内各所に仮設的に分散させて確保する必要が生じていた。

囃子方の休憩・待機場所としては,これまで慣例的に山の西側に面する町家1階を取り壊したピロティ型の駐車場で休憩,準備を行ってきたが,近年急増するホテル建設計画など,土地利用の変化に伴ってこの駐車場も利用不可となった。このため,新たな休憩場所が必要となり,毎年の祭礼期間中のみ継続的に設置可能な仮設テントの計画を検討することとなった。

設計にあたり,囃子方にとっての利便性だけでなく,山との意匠的調和を保ち,混雑する観覧者の通行を妨げないことが前提とされた。また,山建てが完了して宵山期間に入る直前,および宵山期間を終えて翌日の巡行準備がなされる短時間に,それぞれ迅速な設営と撤去が求められるなど,意匠,性能,構法など各側面にわたる検討を要した。

■本研究の位置づけ

本研究は,山鉾町における山鉾設営・維持管理などの 空間的マネジメントに加え,山鉾保存会の維持や催事 の企画・運営に関わるコミュニティマネジメントにつ いて,次代への承継と現代的都市空間への適応を目的 とした詳細なアーカイブを形成し,新たな担い手や空 間創出を実現するための研究の一部をなすものである。 都市空間に蓄積された独自の文化や伝統を尊重しなが らも,未来へ向けた提案性を有する実践的研究の一部をなすものである。

■設計要件

上述のような岩戸山町の特性を背景としつつ,関係者からの聞き取りを通してまとめられた,仮設休憩所についての設計要件は,概ね以下の4点である。

 

1.設置位置は,岩戸山を保護するために南北に設けられる「埒」の南端に連なる道路上とし,観覧者の山への視線や,山周辺の歩行者の通行を妨げないような配置計画とすること。

2.専門技術をもたない数名によって,2時間程度で設営,撤去ができる構造とし,部材の劣化や損傷の際に容易に交換や調整ができるような規格材や汎用性のある工業製品を使用すること。

3.町外から搬入する際,一般の運転者が操縦可能な2tトラックの荷台に積載できるような部材寸法とし,収納にあたっても,できるだけ軽量で省スペースとなるよう折りたためること。

4.内部空間は浴衣を着用した囃子方およそ15名程度を収容できるようにし,来客の訪問や,埒内に待機している保存会との連携などに対応できるような視認性を確保しつつ,休憩所としての隔離性も維持すること。

岩戸山町(京都市下京区新町通高辻付近)
山鉾組立時の配置

■設計概要と設置後の状況

休憩所の寸法は,南北の長さが約4.8m,東西幅は埒に隣接する北端が約3.8m,南端が約2mである。これは,埒北側にある舞台の形状と対となることを見込んだもので,道路の幅が狭く混雑する通行人の往来を,山の東西へ振り分ける機能も期待している。

また,断面形状は棟高が約2.4mの切妻屋根とし,出入口のある軒高を約1.8mとした。これは,構成部材をトラック搬送するうえでの上限寸法によるほか,隣接する「埒」や,周囲の町家などの立面の寸法構成に調和するよう考慮している。

テントの構造となる骨格フレームは,汎用性が高い2×4材と,ソーホース・ブラケットとよばれる接合金物とにより,ピンチクリップ状のA字型の斜行柱と,クリップで挟んだ梁材によって構成した。この構成により,折りたたみによる繰り返し使用を可能としている。また,斜行柱と棟材とは,クリップによる接合に加えてターンバックルによるブレースを付加し,構面内の横力に対する剛性を確保している。なお,棟材は部材の運搬上,規格長の2.4m材を2本連結した。利便性を考慮しテント内部を無柱とするため,連結部は柱で支持せず,樹脂製の既成部品と,ターンバックルを用いて圧接している。

上述の柱梁フレームに取り付くように,周囲の軒を構成する桁と,周壁を構成する柱や敷居を加え,これらに帆布を用いたテント屋根,腰幕,のれんを張って完成とする。

主要構造
接合部の詳細

■設置の様子

設営は作業チーム4名程度で,2時間弱を要した。ほとんどの接合部は手作業の締付けで十分な強度が得られるため,作業に大きな支障を生じることはなかった。また,この締付け強度によって寸法のあそびが生まれ,現場の道路面の凹凸や傾斜への追従性を調整できることがわかった。

休憩所内部には,木製テントと同様にソーホース・ブラケットを用いた仮設ベンチを設え,休憩所としての機能性を高めた。囃子方が浴衣を着用していることから,これらのベンチは座面高をやや高めに設定し,中腰姿勢で座れるようにしたことで,休憩所の腰幕ごしに外部への視界を維持することも可能となった。また,腰幕については,休憩所内外の人々が肘をついてもたれかかれる高さに設定しており,カウンターのようなコミュニケーション空間を生み出すことができた

さらに,屋根面や外壁面を帆布としたことで,夜間,内部の照明が外部へと透過し,駒形提灯にも調和した,宵山独自の夕景に映える新しい明かり景観を生み出すことができた。南側妻面には,帆布の上に「岩戸山」と大きく記すことで,透過する明かりがこれを鮮明に映し出し,観覧客らの記念撮影など,行き交う人々の目を引く様子がたびたび見受けられた。文字表記は,岩戸山町が鉾町全体の最南西端に位置することもあり,通りを北上する人々がはじめて鉾町エリアに入る目印として,祇園祭全体からみても新しいランドマークとなりえたと考えられる。

論文

「景観に配慮した祇園祭山鉾町における仮設休憩所のデザイン」(2020)朽木順綱『日本デザイン学会 第67回春季研究発表大会』p.150-151.

研究者INFO: ロボティクス&デザイン工学部 空間デザイン学科 建築計画研究室 朽木順綱 准教授

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