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ホーム古第三紀神戸層群凝灰岩層の層序学的・記載岩石学的研究
SDGsの分類
研究テーマ
自然科学
学科の分類
工学部一般教育科

古第三紀神戸層群凝灰岩層の層序学的・記載岩石学的研究

工学部

一般教育科

地学研究室

谷保孝 准教授

神戸層群凝灰岩層層序

 本研究では,兵庫県三田盆地に分布する神戸層群凝灰岩層をより精密に区分し,それらの凝灰岩層の記載岩石学的性質を明らかにする.野外調査では凝灰岩層の岩相や分布を,鏡下観察では凝灰岩層の軽石斑晶鉱物の組み合わせを記載する.必要に応じて黒雲母などの化学組成も測定する.また,本研究による凝灰岩層序区分に基づいた地質図の作成も進める.本研究の成果は,神戸層群分布域で発生する地すべりに関する課題などを考察する上でも重要な役割を果たすことが期待される.

研究の背景​

 神戸層群は,兵庫県南部の三田盆地,神戸市西部,淡路島北部などの地域に分布する古第三系(後期始新世〜前期漸新世)である(図1)[1,2など].神戸層群は海成〜非海成の堆積岩類からなり,中・上部に多数の凝灰岩層が挟在する(図2).これらの凝灰岩層は地すべりの発生素因になることがあり,凝灰岩層の層準によって地すべりの特徴が異なる可能性の指摘もある[3,4など].また,神戸層群の地すべりと地質構造の関係性を検討するためには,凝灰岩層を鍵層として地質構造を正確に理解する必要がある.したがって,神戸層群凝灰岩層の精密な層序区分と正確な分布の把握は重要である.

図1.神戸層群の概要(文献[1]を参考に作成).

 神戸層群凝灰岩層の区分・対比については課題がある.例えば,三田盆地の神戸層群は9層準以上の凝灰岩層が挟在し,うち5層準が鍵層として有効であることが先行研究[2]が示したが,この区分は凝灰岩卓越層準を示したもので凝灰岩層に砕屑性堆積岩を挟む場合もある[1].そのため,従来の凝灰岩層の対比は地域によって問題もあることが指摘されている[1].

 以上のように,神戸層群凝灰岩層は鍵層として層序学的な重要性を持つにも関わらず,その層序区分や対比に不明な点も多い.そのため,神戸層群凝灰岩層のより精度の高い広域の凝灰岩層の対比が期待されている[1].

図2. 三田盆地の神戸層群の層序区分(文献[1,2,5,6を参考に作成])

研究の目的

 本研究は,① 三田盆地に分布する神戸層群凝灰岩層のより高精度に層序区分し,その層序区分に基づいて地質図を作成すること,② 採取した凝灰岩試料の岩石記載に基づいて,凝灰岩層の記載岩石学的性質を明らかにすることを目的とする.

研究の内容

 本研究では,三田盆地に分布する神戸層群を対象とし,主に野外調査と岩石記載を実施する.野外調査では,凝灰岩層の上下関係や分布を明らかにするほか,凝灰岩の岩相記載や試料採取も実施する.これらの結果を総合して対象地域の神戸層群地質図を作製する.

 図3と図4は,異なる3地点で観察した北畑凝灰岩層の見かけの特徴(岩相)をまとめた柱状図である(野外で記載したものをカラー化した).柱状図の横軸は粒子サイズを表し,左に出るほどサイズが大きい.また,凝灰岩は粒子サイズの違いよる凝灰岩の分類も示す.柱状図右側の「Sample No.」は,凝灰岩試料の採取位置を示す.

図3.地点1における北畑凝灰岩層の岩相(文献[6]に基づいて作成).

 図3と図4を見ると,北畑凝灰岩層の層厚や岩相は一定しないことがわかる.北畑凝灰岩層以外の神戸層群凝灰岩層についても,その層厚や岩相の側方変化は激しことが多い,そのため,岩相は対比指標になりにくい.

 岩石記載では,試料から作製した岩石薄片(岩石プレパラート)の鏡下観察を実施し,凝灰岩の鉱物組み合わせや軽石斑晶鉱物の組み合わせを記載する.黒雲母については必要に応じて化学組成を測定(EPMA分析)する.その際,基盤岩類由来の結晶片の混入を考慮して,可能な限り軽石の斑晶黒雲母を分析対象とする.

 

図4.地点2(左)および地点3(右)における北畑凝灰岩層の岩相.
図5.地点1における北畑凝灰岩層に含まれる黒雲母のmg#とMnOとの関係(文献[6]を基に作成))

 図5は,地点1の北畑凝灰岩層から採取した凝灰岩試料に含まれる黒雲母のmg#とMnO(%)との関係を示した模式図で,mg#はmg#=100×Mg/(Fe+Mg)の式で算出した値である.地点1で得られた多くの黒雲母データのうち,1つを除いて図中の緑で囲まれた領域にプロットされる.図5を見ると,分布がmg#=50付近でMnOがやや高い領域とmg#=55付近でMnOが低い領域の2つに特徴的に分かれることがわかる.北畑凝灰岩層は,図5のような異なった化学組成的特徴を持つ黒雲母を含むことが特徴である.北畑凝灰岩層のほかにも,上久米凝灰岩層,楠原凝灰岩層および東畑凝灰岩層を特徴づける黒雲母の化学組成的特徴の報告もある[7など].

研究成果の発展

 本研究による,三田盆地の神戸層群に関するより精度の高い地質図は,神戸層群分布域における地すべりと凝灰岩層や地質構造との関係性をより深く理解するために貢献できる.

◆ 文献 ◆

[1] 尾崎正紀,2009,古第三系(日本地方地質誌5近畿地方),195-198,朝倉書店.
[2] 尾崎正紀・松浦浩久,1988,三田地域の地質,地域地質研究報告,地質調査所,93p.
[3] 横山俊治・田中英幸,2000,神戸層群の凝灰岩地すべりの総合検討-その目的と意義,第39回日本地すべり学会研究発表講演集,p371-372.
[4] 中川 渉・谷 保孝・秋山晋二・今岡照喜,2000,神戸層群の地質構造と地すべりの関係,第39回日本地すべり学会研究発表講演集,p379-382.
[5] 谷 保孝,中川 渉,2001,古第三紀凝灰岩層の識別における記載岩石学的検討の有効性−兵庫県三田盆地に分布する異なった2層準の神戸層群凝灰岩層での例−,地球科学,55巻3号,p157-171.
[6] 谷 保孝,中川 渉,2015,古第三紀神戸層群中の北畑凝灰岩層に含まれる黒雲母の化学組成,地質技術,第5号,p53-59.
[7] 谷 保孝,2017,西南日本,古第三紀神戸層群凝灰岩層の岩石記載学的性質,日本地質学会第124年学術大会講演要旨,p22.

論文

「古第三紀凝灰岩層の識別における記載岩石学的検討の有効性−兵庫県三田盆地に分布する異なった2層準の神戸層群凝灰岩層での例−」(2001)谷保孝『地球科学』55(3)p.157-171.

「古第三紀神戸層群中の北畑凝灰岩層に含まれる黒雲母の化学組成」(2015)谷保孝『地質技術』5p.53-59.

研究者INFO: 工学部 一般教育科 地学研究室 谷保孝 准教授

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大森 英樹

家と車の電力を無線で相互融通するワイヤレスV2Hシステム

近年、変動形再生可能エネルギーによる系統の不安定化が問題となっている。電力の平準化を実現する分散システムとしてスマートハウスが注目されているが、蓄電池が高価であることが普及の妨げとなっている。この問題を解決する方法として電気自動車のバッテリーを家庭内配電に双方向に接続して利用するV2H(Vehicle to Home)システムが期待されている。しかし、従来の充電ケーブルを用いる接続方式では手間がかかるために、接続の頻度が低下してしまう。そこで著者らはスマートハウスの利用率と利便性の向上を図るため、電気自動車を家庭のカーポートに駐車するだけで、自動的に双方向の電力融通を行うことができるワイヤレスV2Hシステムの開発を行っている。 本研究では、国際規格SAEJ2954に準拠した許容周波数帯での動作で、家一軒分丸ごとの電力をカバーするハイパワー6kWの電力伝送を双方向で行うシステムの実現を目指している。効率と伝送電力を確保するため高周波の磁界を用いるが、高周波電力を発生する双方向コンバータとして、従来は4つのパワー半導体を用いたフルブリッジコンバータを用いた研究がなされてきた。本研究では、図1のようにわずか1つのパワー半導体で高効率に高周波電力を発生するシングルエンデッドコンバータを用い、従来のブリッジコンバータに比して圧倒的な小形軽量かつ低コストを実現するワイヤレスV2Hシステムを実現し、幅広い普及を目指す。 先に開発したシングルエンデッド式ワイヤレスV2Hシステムでは、(1)コンバータの構成部品である共振回路定数のわずかなばらつきによって伝送電力が大幅に変化してしまうというロバスト性の課題がある。(2)また、過去の技術ではスイッチの導通時間TONを変えて電力を制御するため、動作周波数が国際規格の85kHz帯から離脱するという課題がある。そこで、この問題を解決する新しい方式として周波数を可変しない位相シフト制御式電力制御を提案している。本提案方式を用いたワイヤレスV2Hシステムが高ロバスト性及び位相シフト方式を実現できることを確認できたので報告する。

﨑山 亮一

新規PD液開発ツールの三次元腹膜組織の開発

腹膜は中皮細胞、間質層、基底膜、血管から成りたちます。そこで、本技術は、腹膜を中皮細胞層、間質層、血管内皮層にわけて、それぞれの層を中皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞を用いて作成します。それらを温度感受性培養皿とゼラチン積層化法を用いて、順に積層化することで、体の外で人工腹膜組織を構築します。さらに、腹膜で重要になる溶質の透過や中皮細胞の剥離などをトランスウェルを用いて評価します。 ・通常は1層しか評価できないが、本技術は異なる細胞で3層に積層化した人工腹膜を作成可能 ・積層化した人工腹膜をトランスウェル上に移すことで、溶質透過試験にて腹膜の傷害と溶質透過係数の関係図を作成可能

田熊 隆史

腕振り運動の科学

動物の四脚歩行と異なり,ヒトの二脚歩行は力学的に不安定なものです.体幹や腕部といった質量の大きな部位が脚の上にあり,これを転倒せずに片足で支える制御は大変難しいです.本研究ではこれら上半身を制御の安定性を阻害する要素と考えるのではなく,「うまく上半身を動かすことで歩行を促進できないか?」と考え,そのメカニズムの解明と検証を行います.検証では上半身をバネ要素を持つ柔軟体幹と前後に質点を移動させる腕パーツに近似し,歩行の安定指標である床反力中心が腕振り運動を調整することで操作可能であることを数理的に示しました.またこのことを検証するために実機を試作し,腕振り運動により床反力中心が歩行をしやすいように移動していること,それにより歩行が可能であることを確認しました.

藤 博之

量子幾何学の応用研究

数理物理学の研究分野の一つに量子幾何学があります.量子幾何学は理論物理学のアイデアを基に表現論や代数幾何,位相幾何といった数学の諸分野を結びつける研究分野です.この研究分野の応用研究の一つとして,ファットグラフに基づくRNAおよびタンパク質の構造分類問題に取り組んでいます.

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