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ホームPCA法による新入生の基礎学力分析の研究
SDGsの分類
研究テーマ
自然科学
学科の分類
教務部教育センター

PCA法による新入生の基礎学力分析の研究 学習歴区分・入試区分からの一考

教務部

教育センター

物性評価技術研究室(教育センター)

吉田福蔵 准教授

共同研究者

椋平淳 教授
基礎学力PCA法初年次教育

初年次学生を指導する教育センターの教員は, 大学での専門教育課程の学びにスムーズに繋げるため, 入学時学力の分散を小さくすることに力を注いでいる. そのため, 入学時学力を把握することは重要であるので, 教育センターでは,その一環として数学と物理の新入生学力確認テスト(以下, 学力確認テスト)を実施している.従来は相関分析で数学と物理の2変数からの散布図で相関性の強弱を調べていたが, 新しくPCA法を導入し、学習歴区分や入試区分による分布状態からみえてくる入学時の学力資質を検討した.

PCA法

分析データは, 工学部の8学科で実施した学力確認テストの結果であり, 母数(N)が901の大量のデータを用いた. 数学・物理とも試験時間は40分の100点満点とした. 学力確認テストのデータは2変数だけではあるが, 大きな母数Nを持ったデータの集合体であるので, この貴重な情報を活用させるための統計処理, つまり限られた少ない変数から新しい指標, 目的変数(主成分という)を求めることができる分析(principal component analysis: PCA)法を適用した. 2変数は数学をx, 物理をyとすると,PCA法の2変数データの主成分(A及びBと記述)は,(1)式から(4)式で与えられる.

但し,u1 :単位ベクトル, xバー  : xの平均, yバー  : yの平均, 係数a1=0.7982239, b1=0.6023613はAiの負荷量であり, 寄与率は77.4(%)となる.u2 :単位ベクトル,  係数a2=-0.6020759, b2=0.7984389はBiの負荷量であり, 寄与率は22.6(%)となる.

Aの負荷量a1とb1は両方が正であることから,  A値は数学と物理の各素点を加味した“総合学力”を示す目的変数である. 図1にその関係を示す. 相関係数は, 0.977と非常に強い. これはA値が総合学力ポイントとしての意味を携えていることが明白である.Bの負荷量a2とb2は数学で負, 物理で正であることから, B値は学生が携える数学と物理で区別される“理数能力”を示す目的変数である. B< 0であると学生の数学的思考力(論理的思考)が強く, また0 <Bであると学生の物理的思考力(事象をモデル化するような発想力)が強いといった二分割される結果を与える.

学習歴区分でみる学力

表から, 数学と物理の平均素点がもっとも高かったのは区分aである. 区分aは4科目すべての学習歴を持つ学生であり, しっかりと学習してきた結果といえる. 数学平均と物理平均の両科目を加えた場合,もっとも低い区分iは物理・化学系科目をひとつも学習してこなかった学生であり, その学習歴の結果が反映されている. 図2(a)から, 総合学力は区分hを除き, 区分aから区分iに沿って順次, 減少傾向である. つまり, 学習歴の科目数が多いほど, 数学と物理による総合学力が高い傾向となり, これは大学での初年次学生に対する教育として重要な情報である. 更に図2(b)から, 区分cと区分eは数学的思考力優位, それ以外の区分は物理的思考力優位を示した. 区分cと区分eは, 学習歴がどちらも化学系2科目で物理系は1科目若しくはなしである. 区分dは物理的思考力がもっとも高く, その学習歴が物理全2科目である. つまり, 物理を学習してきた成果は, 学力確認テストの物理の結果に反映している.

入試区分でみる学力

入試区分は10区分(赤が一般,青が推薦)に分かれ, その中でも一般(区分aとb)と推薦(区分c)の入試区分を合わせると, 入学生は全体の約73%を占める主力となる(図3). 入試区分別に総合学力と理数能力の分布特性の一例を示す(図4). 黒印は全体の分布であり,赤印が該当の入試区分である. それぞれの平均は縦横の直線で示す. 破線が基準としての全体, 実線が該当区分の平均である.

総合学力は一般入試区分がもっとも高く平均以上を示し, 次に推薦入試区分で人数がもっとも多い推薦cがほぼ平均となった. 逆に, もっとも総合学力が低かったのは, 推薦入試区分で人数が3番目に多い推薦eであり, その反面,理数能力は推薦入試の中でもっともプラス側に大きいのであるが, 総合学力の結果と合わせると数学力が弱いことを意味する. これらの結果, 初年次教育では入試区分が推薦eの学生には, 特に数学科目を初年次教育の段階できめ細かく指導することが必要となる.

成果と課題

数学と物理の学力確認テストの結果に, PCA法を導入し, 初年次学生の総合学力と理数能力といった新しい目的変数によって, (i) 学習歴, (ii) 入試区分別について検討し, その有効性を確認した. 今後, 教育センターとしては,新しい分析法として導入したPCA法によって, 大学入学後の教育センター担当授業と主要専門教育科目との相関等も, 理数能力でなく新しい目的変数で調べる手段として展開していきたい.

論文

「PCA法による数学・物理に関する入学時の基礎学力分析」(2019)吉田福蔵『Memoirs of Osaka Institute of Technology』Vol.64, No.2p.77-92.

研究者INFO: 教務部 教育センター 物性評価技術研究室(教育センター) 吉田福蔵 准教授

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