コロナ放電を用いた新規な活性酸素種供給法

工学部

電気電子システム工学科

パルスパワー工学研究室

見市知昭 教授

共同研究者

吉田恵一郎
眞銅雅子

液面にコロナ放電を照射すると生成した活性酸素種がイオン風によって液中まで輸送されます。現在、我々はこの現象を利用して液中に含まれる有害有機物の分解を行っており、その結果、従来の技術では困難な難分解性物質が分解できることを明らかにしています。また、従来法では利用できてない新たな活性酸素種が本方式では利用できている可能性が実験結果から示唆されました。このユニークな手法を用いて難分解性有機物の分解やカーボンブラックの分散処理などの応用研究を行います。

動画での説明(脱色のデモ有り)

動画で分かりやすく説明していますので是非ご覧ください。


水上コロナ放電方式の原理

コロナ放電方式の原理を以下に説明します。

①電極間に直流の高電圧を印加すると針電極先端でコロナ放電が発生

②高エネルギー電子を介した化学反応により活性酸素種が生成

③マイナスの電荷を持つ荷電粒子が静電気力により平板電極側に移動。それによって他の気体分子に運動量が与えられ、針電極から水面に気流(イオン風)が発生

④供給された活性酸素種によって液中では化学反応が生じる

このように液面付近では常に活性酸素種が供給されることになるので、特殊な反応場が形成されていると考えられます。

 

難分解性物質の分解結果

難分解性物質のモデル物質である酢酸を使用しました。酢酸は従来技術であるオゾン処理では分解できませんがコロナ放電処理では分解が可能です。

この酢酸を分解するためにはOHラジカルという物質が必要ですが今回の実験で酢酸が分解したことから、液中に到達した種々の活性酸素種の化学反応によってOHラジカルが生成したと考えています。

このOHラジカルを用いると1,4-ジオキサンなどの有害難分解性物質も分解可能と言われています。

まとめと今後の課題

このようにコロナ放電を用いることでオゾン処理などの従来技術では実現できない物質の分解が可能となります。

分解メカニズムについては現在調査中ですが、液中化学反応のシミュレーション結果からO3-などの負イオンが利用できている可能性があります。

実用化に向けての課題としては、分解効率や分解速度が低いといった点が挙げられます。これを解消するために分解メカニズムの解明を行っていきます。また本方式は難分解性有機物の分解だけでなくカーボンブラックの分散処理や液中殺菌にも適用できると考えられます。この研究を進めることで新技術の開発を目指します。

左:処理前 右:処理後

界面活性剤等を用いずに凝集したカーボンブラックを水溶液中に分散することができる

論文

「直流コロナ放電を用いた酢酸の分解における負イオンの影響」(2021)見市知昭『電気学会論文誌A』141(4)p.213-219 .

「水上直流コロナ放電を用いた促進酸化処理」(2018)見市知昭『電気学会論文誌A』138(2)p.57-63.

「pH Dependence on Decomposition of Persistent Organic Compounds in Water Using a DC Corona Discharge」(2017)MiichiTomoaki『International Journal of Plasma Environmental Science & Technology』11(1)p.13-17.

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