匂い検出を目的とした半導体ガスセンサシステム 半導体ガスセンサ内部の ヒータを積極的に制御したセンサシステム

情報科学部

情報知能学科

組込みシステム研究室

荒木英夫 准教授

これまでにもコンピュータを利用した嗅覚について研究されているが、一般消費者が利用可能な形では実用化されていない。このことから我々はだれでも利用可能な人工嗅覚装置の実現を目指して研究を行っている。  人工嗅覚を実現するためには、空気中の化学物質を測定する必要があり、主にガスセンサを用いた研究がおこなわれている。本研究でも安価で取り扱いが容易な半導体ガスセンサを用いている。半導体ガスセンサは反応するガスが異なる種類が提供されており、我々の研究では複数の特性が異なる半導体ガスセンサとマイコンを組み合わせた小型で取扱いが簡単な人工嗅覚装置の実現を目指している。  一般的な半導体ガスセンサはヒータを持ち、内部の温度を管理する必要があるが、このヒータによる加熱を変更することにより感度を変化させることができる。これを利用して、一つのセンサからできるだけ多くの情報を得ることができるハードウエアを作成した。そして、得られた情報から匂いの種類を分類するために、機械学習を取り入れた認識システムを実現し評価を行った結果を示す。

  •   半導体ガスセンサと評価システム

 半導体ガスセンサは、基板上に酸化スズが積層された構成を持ち、これをヒータにより全体を加熱した状態で使用する。酸化スズは、清浄な空気中では酸素が表面に吸着し自由電子を吸着することにより電子の動きが妨げられる。これにより酸化スズの電気抵抗は大きくなる。この状態のセンサに還元性ガスを暴露すると、酸化スズ表面の酸素が取り除かれ、電子が自由に動けるようになり電気抵抗は低下する。半導体ガスセンサは、センサ毎に検知する還元性ガスを設定し、これに応じた表面処理などが行われている。表1に本研究で用いているセンサの種類を示す。

 次に、実験システムの構成を図1に示す。動作を始めると、マイコンは各ヒータの電圧制御を行い、内蔵のA/Dコンバータからセンサの出力値を読み取る。電源回路は、それぞれのセンサで独立しており、他のセンサへ影響が及ばないようにしている。このシステムを用いて、消毒液(アルコール)により得られたセンサの出力を図2に示す。この出力では、ヒータ電圧の変化に伴いセンサの感度が変化していることが確認できる。さらに、出力の全体としては、センサがアルコールに反応して出力電圧が増加している。この出力結果をヒータ電圧の制御が同じ状態のものを分類する。センサの出力を別にプロットした波形が図2中に示した3つの波形である。

  • 判別処理とデータの有効性の確認

 図2を分類して得られたデータから5段階のヒータ電圧(ただし中間の電圧では上昇時と下降時の2回)に対応する値を取り出し、計8種類4組のデータセットを作成した。この32組のデータセットから、さらにそれぞれ振幅と傾きの最大値を求め、最終的に1回の測定から64次元のデータを生成した。得られたデータの判別にはMulti-Layer Perceptron (MLP)を用い、その評価にはニュージーランドのワイカト大学が開発し、公開と配布を行っているWeka (Waikato Environment for Knowledge Analysis v.3.8.0)を用いた。

 評価用の学習データとして、3種類の醤油(薄口A+B、濃口A+B、減塩)の測定を行い、得られたデータセットを用いた。その後、濃口醤油Bの測定3回行い、元の4セットのデータ共に判別を行った。次に薄口醤油Bも4セットの測定を行った。実験結果を表2に示す。結果として醤油の種類の判別に成功した。

 

研究シーズ・教員に対しての問合せや相談事項はこちら

技術相談申込フォーム