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SDGsの分類
研究テーマ
建築ライフサイエンス
学科の分類
工学部建築学科

関西地域の住宅における温熱環境と快適性および環境調整行動に関するフィールド調査

工学部

建築学科

環境第1研究室

今川光 助教

温熱環境居住者行動フィールド調査統計解析

人間が多くの時間を過ごすであろう建築内の快適性構築は重要です。そして、その人間の快適性は季節に応じたすまい方によって変動します。本研究では関西地域の実際の住宅において、温湿度計などによる「物理環境自動測定」と居住者に快適性と行動習慣を回答してもらう「アンケート申告」を同時実施する「フィールド調査」を1年以上行い、居住環境のデータセットを構築して統計解析することで、居住実態を解明するとともに、季節に応じた適切な温熱環境や環境調整行動の提案を目指しています。

適応的な快適性に着目

私たち人間は日々の生活のほとんどを建物内部で過ごすと思います。したがって、その人々が滞在する建物空間内の快適性を考えることは重要です。これは、住宅でもオフィスでも学校など…どこにでも当てはまると思います。そしてその「人間」を囲んでいる「建物」もまた、「都市」「気候」に囲まれている、という考え方があります。つまり建物の快適性を考える上では「(建物外の)気候の変動」にも注目することが大事です。特に日本は、暖かい春から暑い夏、涼しい秋、寒い冬…というように、1年間を通して大きく変化する地域の1つです。そのような環境において私たちは、各々の季節に合った行動や服装、空調を選択して「適応」することで、不快を避けながら過ごしています。現代では空調機器によって「変動の小さい温熱環境」で暮らすことも可能かもしれません。しかし、健康やエネルギー問題、さらには季節情緒など…も踏まえると、建築外環境の変動に上手に「適応」しながら生活することは大切と考えられます。私たちはこの「適応的な快適性」に注目して研究を取り組んでいます。

「現場」データで居住実態を解明

温熱環境分野の研究は様々あります。その中でも私たちは、実際に人が滞在している環境(つまり実生活中)での環境測定とアンケート申告を通した「フィールド調査」を軸に研究を取り組みたいと思っております。特に四季変動を持つ日本においては、年間を通した長期フィールド調査の実施が大切です。この長期フィールド調査からデータセットを構築し、統計解析を行うことで人々の温熱環境と快適性そして住まい方の実態を解明します。

これらの研究成果は建物環境や住まい方の改善点を発見だけでなく、「実際の人々はどのような環境で、どのように過ごし、どのように感じているのか?」を定量的に示す基礎資料となると考えております。一例として、建築温熱シミュレーションや実生活での住まい方推奨アプリケーションなどの開発時に、これらの現場の知見を設定に組み込むことで応用できると考えております。特に住まい方推奨アプリケーションについては、現場からの知見の応用として、将来的に取り組みたい派生的課題の1つです。

 

自動測定による住宅物理環境の収集

フィールド調査の概要を説明していきます。本調査では、温度などの測定値を自動で記録できる測定機器を用いて、住宅内の物理環境値を記録していきます。通常、記録は10分間隔で設定しております。測定項目は室内の気温と相対湿度の他にも、グローブ温度(放射熱を考慮した温度)やCO2濃度、照度も測定しております。これらの測定機器を1つのスタンドに設置することで、測定ポイントを設定します。Fig.1はその一例です。

また、Fig.2などのように壁や窓、床の表面温度の測定も同様に自動測定ができます。一例として、冬季では床が冷たいことで不快と感じると考えられますが、実際はどのくらいの温度が低いのか?を定量的に把握できます。

また、2025年度より窓開閉センサーと騒音計も導入しています。窓開閉センサーでは開閉動作の要因について詳細に検討し、窓開閉行動の数式モデル化に取り組みたいと思っています。

2021082001
Fig.1 測定機器のセット例
2021082002
Fig.2 住宅における壁・窓の表面温度の測定風景

アンケート申告による居住者快適性・行動習慣のデータ収集

そして前述の自動測定と同時に、居住者にはアンケート申告も実施しています。アンケートでは居住者の快適性だけでなく、居住者行動の状況(窓開閉やエアコン・扇風機の使用、着衣調整など)も回答してもらいます。Fig.3はこれらの回答項目をまとめたアンケート用紙の一例です。この用紙を複数部まとめて冊子にして居住者にお渡しし、居住者の都合の合うタイミングで回答してもらいます。

Fig.3 調査に用いたアンケート用紙の一例

データセットの構築

フィールド調査から得られた測定・申告のデータからデータセットを構築します。一例として、アンケート申告の各回答データに対して同じ時刻の自動測定データを対応づけるデータセットをよく使用しております。さらに、気象庁公開の気象データも同じく対応づけることで、室内の快適性や行動を、室内外のどちらの環境変動からも分析できるようになります。一例として、Fig.4は以前に関わった関東の住宅でのフィールド調査のデータセットの一部分です。

Fig.4 データセットの一例。2021年度に実施した関西地域の住宅7世帯のフィールド調査より、1305回答を取得した。

住宅の居住実態の解明

関西の住宅におけるフィールド調査は2021年度から開始しており、2025年度の現在も調査世帯を移してデータ収集に取り組んでいます。以下に調査経過で得られた環境調整行動などの成果を示します。

Fig.5はアンケート申告時のデータを用いて、各月の外気温と室内気温の平均値を示しています。外気温は夏季では平均室内気温が約27℃まで上昇しており、個々の測定値では30℃を超えている時もありました。一方、冬季では平均室内気温が約20℃の傾向を示しており、低下した外気温と比較しても室内気温が高く保たれていた傾向であることが分かりました。

また、Fig.6では窓開放とエアコン冷房の使用頻度の割合と外気温の関係性を表しています。ここから、外気温の変動(つまり季節変動)に応じて居住者行動も変わることを表しています。これは季節に応じた適応的な快適性のためのアクションと考えられます。変動傾向を確認すると、エアコン冷房は暑くなるにつれてその使用頻度が上昇していきますが、窓開閉は外気温が約24℃の時に最も開放頻度が多い傾向であることが分かりました。当時は感染症が流行している時のデータが多く、窓を開放しながらエアコン冷房使用を行うケースが増えることで、高外気温時の窓開放頻度も高くなると予想しました。しかし、調査対象住宅においてはそのような傾向はみられないことが考えられました。

Fig.7では、各月のエアコン冷房使用割合と月平均外気温の関係を示しています。私として興味深く考えているのが、6月と9月は同等の外気温とみえますが、9月の方がエアコン冷房使用の頻度が多いことです。これは居住者自身の無意識な行動の差によるかもしれないし、一方で快適性自体の季節差にもよるかもしれません。いずれにしろ、同様の季節における適応行動の差異を解明することで、行動改善による省エネルギーの可能性があると考えています。






Fig.5 各月の申告時における室内外平均気温 [1]。外気温だけでなく室内気温も年間を通して大きく変動しているが、冬季の室内平均気温は約20℃を保っていた。

Fig.6 環境調整行動割合と外気温の関係 [1]。窓開放やエアコン冷房使用の頻度を割合で表しており、外気温変動(季節変動)に応じて居住者はこれらの使用を切り替えていることをモデルで定量的に表している。

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Fig.7 各月のエアコン冷房使用割合と月平均外気温の関係[2]。6月と9月では同等の外気温帯であるが、エアコン冷房の使用頻度は9月の方が多い。ここに、さらなる省エネルギーの可能性があると考えています。

研究発表:[1]今川光,令和4年度日本建築学会近畿支部研究発表会

     [2]今川光,2022年度日本建築学会大会

最後に

本ページのような関西の住宅のリビングのフィールド調査を行っている一方で、関西地域の実際のオフィス空間での温熱環境・熱的快適性のフィールド調査も実施しました。今日ではテレワークもさらに普及した一方で、実際のオフィス空間で勤務せざるを得ない方々もいらっしゃると思います。そのため、住宅とオフィスのどちらの快適性についても引き続き研究する必要があると考えております。

また、私たちの研究では、年間の季節変動に応じて快適性も変動することについて着目しており、そのために長期フィールド調査を実施している点は、一つの大きな特色であると考えております。

これらの調査から、年間を通した建築環境構築のための基礎資料を住宅とオフィスの共に提供することを目標に継続していきたいと思っております。

※現在も、住宅の長期フィールド調査の調査世帯を探しております。室内温熱環境・快適性などに興味がありましたらお声掛けいただけますと幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

研究者INFO: 工学部 建築学科 環境第1研究室 今川光 助教

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椋平 淳

共生社会の深化に資する演劇事業の企画・運営

高齢化や経済格差拡大などの社会環境の変化を背景に、劇場のもつ社会包摂機能が注目されている。特に公共の劇場が提供する事業には、単に舞台関係者や芸術愛好家に訴求する要素だけでなく、広く一般の人々の幸福感増進やコミュニティ活性化に資する多様な機能が求められる。個別の演劇事業の企画・運営や統括的な劇場運営・プログラムデザインのあり方、さらには共生社会の実現に向けた劇場を拠点とする地域貢献の方策について、実践的に探求する。

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皆川 健多郎

ものづくり人材育成のための教材開発とその検証

生産性向上はモノづくり現場のみならず、多くの現場における喫緊の課題となっている。かつてはこれらの課題に取り組む人材育成は、小集団活動やOJTも含め活発におこなわれていたが、長引く景気低迷、生産の海外移転などにより、近年ではその取り組みは必ずしも十分とは言えない。特にモノづくり現場では人口減少に伴う人手不足、またその対応としての外国人労働者の受け入れなど、生産性向上への対応は急務といえる。本研究代表者は、これまで1,000回を超える製造現場訪問を通じて、現場での実態を把握するとともに、問題解決のための教材開発ならびに教材を活用したセミナーの実施を進めてきた。さらにここにIoTも融合し、さまざまな現場にて自律的に生産性向上を実現する取り組みの推進と、経営工学(管理技術)の普及を目的としている。

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