研究テーマの分類 - 人文学

26件の研究シーズが見つかりました

雨宮 徹

生きる意味の研究

 ニヒリズム(この世界は生きるに値しないという世界観)の克服をテーマに、主にフランクル(V.E.Frankl,1905-1997)の意味の思想の研究を行っている。ユダヤ人であるフランクルは、強制収容所の体験記『夜と霧』によって世界的に有名であるが、精神科医としてニヒリズムの克服を一生のテーマとし続けた人物である。全体像が見えづらく断片的な印象を与えるフランクルの思想を、哲学の立場から体系化し、理解を深め、そこからニヒリズムを克服しうる理論を明確にすることを目的としている。 

椋平 淳

共生社会の深化に資する演劇事業の企画・運営

高齢化や経済格差拡大などの社会環境の変化を背景に、劇場のもつ社会包摂機能が注目されている。特に公共の劇場が提供する事業には、単に舞台関係者や芸術愛好家に訴求する要素だけでなく、広く一般の人々の幸福感増進やコミュニティ活性化に資する多様な機能が求められる。個別の演劇事業の企画・運営や統括的な劇場運営・プログラムデザインのあり方、さらには共生社会の実現に向けた劇場を拠点とする地域貢献の方策について、実践的に探求する。

田岡 育恵

オクシモロンの謎―意味の矛盾と伝達効果

オクシモロンとは「小さな巨人」のように反対の意味が同じ対象に適用されるレトリックである.「小さくて大きいものは何だ?」とすれば「なぞなぞ」にもなり得るが,字義通りに考えれば反対語が共起しているのだから矛盾することになる.しかし,実際には意味解釈に支障は来さない.それどころかこのレトリックならではの伝達効果がある.オクシモロンの構造,伝達効果は私の研究テーマの一つである.

Mellor Andrew

Learning New Vocabulary

Students of English need to learn a lot of vocabulary. To be successful, they need to decide what vocabulary items to learn. As they choose which vocabulary items to study, considering the frequency of the vocabulary items in general use may be useful as well thinking about their own personal needs. They also need to decide which aspects of those vocabulary items to learn. and how to learn those vocabulary items. There are many aspects involved in learning vocabulary items related to form, meaning and use. Also they need to decide how to study vocabulary. This may include questions as to whether to learn items in isolation or context, whether to learn in semantic groups and how to reinforce and review learning.

田岡 育恵

逆接の意味が漂白化したBUTの「逆接」とは何か?

辞書に,butのspokenの用法で逆接の意味が漂白化したような意味が記述されている.それらは,「怒り,驚きなどを表す」,「謝罪の後に用いる」,「話題転換する前に用いる」,「語の反復の間に用いる」という用法である.しかし,butが本来持つ逆接の機能とこれらの用法とのつながりはよく分かっていない.そこで,but の逆接の意味が漂白化した用法とbut本来の逆接の意味とがどのようにつながっているのかについて述べる.

矢野 浩二朗

VR伴大納言絵巻

初等、中等教育の国語科においては、古典作品の歴史や背景を学びながらそれを楽しむ態度を育成することが求められているが、現実には古典に親しみを持つ児童や生徒は多くないのが現状である。そこで本発表では、我々が開発している絵巻物「伴大納言絵巻」の上巻の没入型インタラクティブコンテンツについて紹介する。このコンテンツでは、絵巻中の人物を切りだしてポリゴン化し、仮想空間内の絵巻に配置している。ユーザーはヘッドマウントディスプレイを通して絵巻を鑑賞し、仮想空間内で絵巻にユーザーが近づくと人物がアニメーションし、シナリオに従って発話できるようにすることで各々の人物が絵巻の物語の中で何をしているのかを理解できるようにした。このコンテンツを活用することで、絵巻物の内容理解、および興味関心が向上することが期待される。

瀧川 宏樹

英国ヴィクトリア朝の文学作品における男性像の研究

本研究では、英国ヴィクトリア朝の男性表象の探求をテーマとしている。当時、男性は女性と比較して、社会的に優遇された立場にあった。そのため、これまでの研究では、社会的に冷遇されていた女性に焦点を当てたフェミニズム研究が盛んに行われてきた。 ところが、昨今のジェンダー研究においては、社会的に優遇されている男性もまた、社会が求める理想的な男性像に苦悩しているのではないかという視点が確立されている。男女平等を確立し、女性が生きやすい社会を作ることは言うまでもないが、男性も生きやすい社会を目指してこそ、真のジェンダー平等の達成と言える。 ブランウェル・ブロンテの作品における男性表象に着目し、そこから見えてくる理想的な男性像と、ブランウェル・ブロンテが実人生で直面した現実の男性の生き様との間の齟齬を探りだすのが、本研究の目標である。

中西 淳

大規模言語モデルが切り拓く新しい語彙学習法

現在、外国語学習者向けの語彙選択問題の自動生成・評価システム(CAVES)を開発しています。CAVESは、語彙の使い分けトレーニングに特化した学習支援システムです。大規模言語モデルを活用しており、GPTによる無限の問題生成と学習者レベルに合わせた調整、BERTによる確率に基づいた詳細な採点が特徴です。システムの使用方法は簡単で、単語選択、難易度設定、問題生成、解答、評価の流れで進みます。今後の精度向上により、語学学習の効率化と個別化が期待されています。

大塚 生子

イン/ポライトネスと人間関係の周縁化について

通信手段の多様化によるコミュニケーションの機会の増加は、他者との親密な関係を築く機会の増加であると同時に、対立を生み、人間関係の軋轢が生じる機会の増加であるともいえる。 従来、言語使用と人間関係の構築(維持、崩壊を含む)を取り扱うイン/ポライトネス研究は、「円滑なコミュニケーション」を前提とした「相手への配慮」に関心を置き、人を周縁化したり傷つけたりする相互行為には着目してこなかった。 本研究では「ママ友」のコミュニティを集団特性を持つコミュニティのひとつと見なし、相互行為者間の実質的・感情的利害の対立に由来する場面の分析を通して、集団内での他者の周縁化を考察する。

田岡 育恵

逆の意味をつなぐANDとアドホック概念の形成

(1) He looked vicious and attractive.  (1) の前項はviciousというネガティブな状態を表す語であるのに対して、後項はattractiveというポジティブな状態を表す語である.ここでは,「やくざな感じで(そこが)魅力的だった」というように、前項が後項の要因になっているような解釈になる.しかし,本来,ネガティブとポジティブという逆の意味をつなぐのに,何故butではなくandの使用が許されるのか?そこにはアドホック概念の生成が関わるものと考える. ここでは,そのアドホック概念の形成について考察を述べる.

横山 香奈

ハワイにおける日系移民の成功要因に関する一考察

 ハワイでは、日系移民が他のアジア系エスニックグループに比して突出した成功を収めた。成功した背景理由として、「日本人は勤勉で我慢強かったからだ」と精神論に終始することが多いが、調査の結果、それ以外にも多角的要因が寄与していることが示唆された。 かつて海外へと移り住んだ日系移民の一例を参考に、今後、日本においても移民の教育問題について検討したりするなど、多方面に還元できるような研究に繫げていくことを目指す。

田岡 育恵

「しかし暑いね」vs. But it is hot.

「しかし」は,前件の含意を否認したり,前件と後件が対照的な事態になっている場合に,つまり,逆接関係があるときに用いられる接続詞である.しかし,「しかし暑いね」と,それまで「暑くないはずだ」と思っていなかった状況でも言うことがある.「暑い」という状況をその場にいる人と共有していることを示そうとする,そのような発話である.だが,「しかし」は,本来,逆接を表わす語なのだから,その逆接性がどこかに込められているはずである.その「逆」とは何か?また,このような「しかし」に対応する用法は,英語のbutにもあるのだろうか?

内田 浩明

カント『オプス・ポストゥムム』と初期ドイツ観念論の研究

私の研究テーマは、ドイツの哲学者イマヌエル・カント(1724-1804)の思想究明である。カントの著作は数多くあるが、カント哲学の代名詞とも言える「批判哲学」の主著と目される『純粋理性批判』は、まず理解しなければならないものである。しかし、それだけではカントの思想の全体像は浮かび上がってこない。 そこで、近年はカントが最晩年に書き残した『オプス・ポストゥムム』(ラテン語で「最後の作品」という意味)と呼ばれる草稿と『純粋理性批判』やカントの他の諸著作、および初期ドイツ観念論との関係を解明するための研究を行っている。

古樋 直己

映画・洋楽の英語教育への活用

英語の運用能力向上には、英語に接する時間の増加が必須である。たしかに、学習時間の増加がそのまま英語運用能力の向上につながるとも限らない。しかし,学習量を増やすことは不可欠である。これには、苦にせず接することができる素材が必要となる。元来、娯楽用に制作された映画や洋楽は、楽しみながら本物の英語に接することができるという点で優れている。ただ、本物であるからこそ、学校の英語との橋渡しの工夫が必要となってくる。

川田 進

アジアの宗教紛争・民族問題と安全保障

1991年以降、中国、インド、ネパール、ミャンマー、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム等で、宗教問題や民族紛争に関する現地調査を継続してきた。主要なテーマは「チベット問題」と「イスラーム紛争」である。「宗教NGO」という視点から、穏健な「宗教ネットワーク」「民族コミュニティ」形成の糸口を明示し、紛争解決の有効な方策を提示する。日本社会が抱える弱点の一つは、「民族問題やイスラーム社会への理解不足」である。一連の研究が、テロ事件の背景や海外在住邦人の安全確保など、日本の安全保障及び民間企業・個人が海外で活動する際の安全確保に資することを目指す。

大谷 真弓

「その人らしさ」の表現を目指す

人の「その人らしさ」は、様々な形で表現されます。摂食障害等のこころの病は、その人の「生きづらさの表現」だという視点でも捉えられますが、他方で、芸術活動にその人の表現を載せることで、そこに表われてくるものを、「生きづらさの表現」としてではなく、まさに「その人らしさ」が表われているのだ、という視点から捉えることも可能です。本研究では、「その人らしさ」が芸術活動(本研究では陶芸活動)の中で表現されているという視点から、陶芸活動を視ています。その上で、「その人らしさ」がいかに表われてくるのか、いかに変化していくのかを追い、どのような表現をすることが「生きづらさ」からの脱却へとつながるのか明らかにし、実践につなげます。

田岡 育恵

譲歩・対比の文脈でのand

譲歩・対比の用法のand について「butと交換可能」という記述が辞書に見られる:/ ǽnd / [対照]それなのに、しかし、(また)一方《♦butと交換可能》;[譲歩的に]・・・なのに(小西友七・南出康世編集主幹『ジーニアス英和大辞典』).しかし,譲歩・対比を表すのにbutではなく,わざわざandを使うのは,それなりの伝達効果を見込んでのことである.譲歩・対比の文脈で使用されているandについて,butにはないandの伝達効果を紹介する.

西山 由理花

近代日本における政党政治の形成と崩壊に関する研究

近現代日本の民主主義のあり方に関心を持ち、近代日本の政党政治について、特に政党政治家の人物研究という観点から研究を行っている。近代日本の政党政治の形成・崩壊過程の中心にあった人物に焦点を当てることで、政策や組織の成り立ちの背後にある教育や社会状況をも含めて近代日本社会を理解できると考える。

中西 淳

言語理解AIを活用した「単語の使い分けマップ」の開発

英作文を書いていて「この英単語はこのタイミングで使っていいのかな?」と迷うことは多くの英語学習者に共通する悩みだと思います。一方,どの英単語がどの文脈で使用できるかどうかを調べるのは簡単ではなく,結果的に馴染みのある単語を繰り返し使ってしまう傾向にあることが様々な研究で報告されています。本研究では,英語学習者が様々な単語の適切な使い方を学習できるように,近年注目を集めている言語理解AI(GPT・BERT)を活用して,様々な用例や類語の関係性を視覚化することのできる「単語使い分けマップ」の開発を目指しています。

米田 達郎

双児宮の名称変化

語彙の変化をヒトが意図的に起こすことは一般的にはない。自然に変化していくものである。しかし、十二宮の名称は明治になってから学術的に変化する。これはギリシア神話とも密接に結びつくかとも思われるが、何よりも世界基準に合わせるということもあると思われる。ここでは、双児宮の名称変化について、幕末から明治にかけて陰陽宮・双兄宮・双女宮が双児宮へと変化する過程を記述的に確認しつつ、双児宮へと名称変化した背景について考察する。 本研究では、理科学語彙の歴史的な変化を取り上げているが、それは生活語彙・教育語彙の変化ともいえる。多方面に派生する研究の一側面である。

尾田 知子

J. D. サリンジャーの文学作品における「移動」

本研究は、アメリカ作家J. D. サリンジャーの文学に描かれる「移動」に着目し、その多様性と特異性を明らかにするものである。アメリカ西部や南部への長距離移動を描く「ロード・ナラティヴ」の本流とみなされてきたのは、同時代のアメリカ作家ジャック・ケルアックであるが、サリンジャーの小説はケルアックの文学と少なからぬ共通項を有する。したがって本研究は、両作家作品の共通点を踏まえつつ、ケルアックとは方向性を異にするサリンジャー作品独自の「移動」の諸相を考察する。

横山 恵理

デジタル時代の〈源氏物語〉

黒澤翁満『源氏百人一首』(天保10年刊)に対し、TEI(Text Encoding Initiative)を用いてテキストデータ構築を行った。 『源氏百人一首』本文に対し、人物・巻名・地名のタグ付けを行うことによって可視化したり、IIIF画像・『源氏物語』本文・『源氏物語』注釈書内容・現代語訳へと情報を拡張したりすることによって、「デジタル時代の〈源氏物語〉読み」が可能となる。また、江戸時代の源氏物語享受(和歌配列や撰歌基準、注釈の特徴)が可視化され、テキストデータを通して、いにしえ人の『源氏物語』理解に近づくことができる。

辻本 智子

認知言語学的手法を応用した英語前置詞教材の開発

英語習得において、しばしば躓きの原因となる多義語の前置詞であり、また認知言語学における多義語研究が前置詞に関して最も進んでいることから、認知言語学の知見を生かした中学生向けオンライン教材『アニメで学ぶ 英語前置詞ネットワーク辞典』を開発した。認知言語学で言う「スキーマ図」のアニメ化がポイントである。

大塚 生子

日常会話における差別の(再)生産について

「ヘイトスピーチ」という語はこれまで、街宣活動やオンラインの掲示板などで不特定多数の人々に向けて発せられる、特定のアイデンティティを有する人々への差別的言語行動に対して用いられてきた。しかし、偏見や差別が人々の日常会話において談話を通して(再)構築されることを鑑み、本研究では個人間会話というミクロレベルでの差別の実践を問題とする。本研究では実際の会話の談話分析を通し、日常会話における差別は、「差別は悪である」という社会通念・規範よりも、相手との人間関係を良好に保つという相互行為上の規範が優先されるために起こるということを論じた。

横山 恵理

「古典×IT」で未来の学びを創出

画像コンテンツを用いて効果的な学習を支援するアプリケーションを開発した。提示された画像の細部を意識しつつ、ゲーム感覚で学習できる三つの機能を実現している。①一枚の画像ファイルをピースに分割して元の絵に戻すパズル機能。アノテーション機能も付与している。②画像(絵画資料)上に付箋を貼ることで、データ管理ができる。複数人の遠隔操作でも画面共有することが可能。③複数の画像を表示し、関係の深いものをマッチングする神経衰弱ゲーム。画像提示枚数の変化によって出題難易度を変更することも可能。いずれも遠隔授業に対応している。