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ホーム渦鞭毛藻シスト(休眠胞子)を中心としたパリノモルフ群集の研究
SDGsの分類
研究テーマ
自然科学
学科の分類
工学部一般教育科

渦鞭毛藻シスト(休眠胞子)を中心としたパリノモルフ群集の研究

工学部

一般教育科

生物学研究室

小島夏彦 教授

共同研究者

松岡數充
海洋沿岸生態系渦鞭毛藻シストパリノモルフ

 沿岸海洋表層堆積物には無数の生物起源物質が含まれているが,その中で単細胞の藻類である渦鞭毛藻はその休眠胞子(シスト)を堆積物中に残すことがある.そのため,堆積物中からそれらを抽出,分析することにより赤潮・貝毒予測をはじめ様々な情報を引き出せる.また,その堆積物から同時に産出するパリノモルフと呼ばれる多様な有機質の生物遺骸群集の存在も注目される.渦鞭毛藻シスト研究から派生的に生まれた分野とも言え,未解明の部分も多いが将来的には環境解析のツールとして利用できる可能性を秘めている.

渦鞭毛藻シスト群集とは

 渦鞭毛藻は単細胞の生物で独立栄養種と従属栄養種が混在する分類学的には位置づけが難しい生物である.生態系の中では一次生産者を含んでいることから,生態系研究上重要な分類群である.この渦鞭毛藻の中にはシスト(休眠胞子)を形成するものがあり,さらにそれらの中には化学的な耐性をもつことから過去から現在までの堆積物中に含まれていることが知られている.そのため,これらシスト群集は主として古生物学の研究対象にされてきた面がある(Kojima et al 1994など).渦鞭毛藻シスト化石群集を時系列で明らかにすることにより,その場所の過去の海洋環境の変化が明らかになり,いわゆる示相化石として重要であることが示されている.一方で渦鞭毛藻が赤潮(図1),貝毒を発生させる重要な分類群であることから,これらの現象予測のために水産学サイドから研究が行われてきた過去がある.貝毒を引き起こすことが知られているAlexandriumのシストモニタリングは今では各地の水産研究所で重要な仕事になっている.また近年では津波などの自然災害が赤潮の大発生を引き起こす可能性を論じるなど,人の生業と自然のメカニズムとの関係を論じるような新しい視点の研究もでてきている(Matsuoka et al 2019).

図1 伊豆・三津の赤潮(2011)

海産パリノモルフ群集の重要性

 渦鞭毛藻シスト研究の中で,強酸等で堆積物処理をして,これらシストと同時に検出されるものを総称してパリノモルフ群集と呼んできた(当然渦鞭毛藻シストもこれに含まれるが).パリノモルフとは具体的には有機質の殻や膜をもつ生物の様々な部位を指す.多くが渦鞭毛藻シストと同様に化学的に耐性があり,堆積物中に長期間保存されるという特性を持つ.これらは多様な分類群からなり,菌類の菌体や胞子,渦鞭毛藻シスト,緑藻類,プラシノ藻類,有鐘類のロリカ,有孔虫類のライニング,扁形動物の卵,環形動物の口器,甲殻類の耐久卵(図2) ,蘚苔類の胞子,裸子,被子植物の花粉(図3)などが含まれている.

 海産パリノモルフは国内でも1990年代から注目されていたが,研究蓄積は進んでいない.その少ない研究例として大阪湾の場合が知られているが,それを見ると例えば麻痺性貝毒を引き起こすAlexandriumのシストが頻出したり,魚毒性ラフィド藻のChattonellaがまとまって検出されたりすることから漁業関係者に多くの情報を提供できることを示している.さらに淡水性緑藻類遺骸の分布が,淀川からの流れが反映されている東部沿岸残渣流の方向を示していると推測されていることから内湾の流れについての情報を反映していると考えられる.このようなことからパリノモルフ群集が環境復元に有効なツールになり得ると結論づけている.また,これら産出生物は現在の生産量を反映していることもあり,場所によって同じ種類のパリノモルフの産出量が大きく異なる場合が見られる.これは今後堆積物中に蓄積されたこれらの群集がその生物生産量とどのような関係にあるか対応関係がある程度つけばその水域の詳細な生態環境の推定につながることが期待される.

 パリノモルフ群集は多様な分類群から構成されていることもあり,網羅的にこれらの生物を扱っている研究者は少なく,それがこの分野の研究の遅れの要因になっている.しかし,内湾など海洋生物や陸上生物の体を形作っている多様な生物が堆積する場は,一方で沿岸漁業,養殖業の適地であり,陸側は人口密集地が広がっている場合が多い.この事実は内湾周辺域がいかに人にとって重要な場所であり,その環境を良好に保つ必要性が高いかを示していると言える.まさに「持続可能な開発」を意識せざるを得ない環境であり,パリノモルフ群集のもたらす情報が今後この場所の保全政策の立案に利用されることがあるかもしれない.

図2 甲殻類の耐久卵
図3 針葉樹の花粉

今後の研究の展望

 渦鞭毛藻シストを中心とした海産パリノモルフ群集の研究進展は,その研究の中心となっている内湾域の環境研究に重要な情報をもたらすと期待される.その中で渦鞭毛藻シスト群集からは,まだ未同定の種が多くあることから赤潮,貝毒予測の精密化や内湾生態系における渦鞭毛藻の役割に関する新知見を得られることが見込める.またパリノモルフ全体としては,これらが海と陸の多様な分類群を含むことから,これらを一体としたものとして扱うことで海陸双方の情報を含んでいることが,情報の多様性,精密性を格段に上げる可能性が考えられる.今後解析方法が確立されれば様々な環境情報を過去から現在に至るまで明らかに出来る可能性がある.

図4 渦鞭毛藻シスト

論文

「渦鞭毛藻シスト群集による中海上部完新統の古環境分析」(1996)小島夏彦『Laguna』No.3p.41-48.

「Vertical and horizontal distributions of ellipsoidal Alexandrium (Dinophyceae) cysts in coastal sediment with special reference to paralytic shellfish poisoning caused by tsunamis -a case study of Osaka Bay (Japan) and the southern coast of the Korean Peninsula」(2019)MatsuokaKazumi『Korean Journal of Environmental Biology』37(3)p.268-277.

研究者INFO: 工学部 一般教育科 生物学研究室 小島夏彦 教授

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宇戸 禎仁

電気探査法による簡易生体インピーダンスCT法の開発

体表面電位分布を計測するために開発した小型電極アレイを用いて,簡単に体内のインピーダンス分布を低侵襲的に計測する技術の開発を行っている。通常のインピーダンスCTのように多数の電極を体表面に配置するのではなく,簡単に着脱が出来る小型電極アレイを計測に用い,地質調査の分野で使用されている電気探査法を利用して内部のインピーダンス分布の再構成を行う。現時点ではまだ,生体の計測には至っていないが,電解液中に導電性ゲルを配置することで人体のインピーダンス分布を模擬し,計測のシミュレーション実験を行っている。また,有限要素法による解析も行い,実験結果と比較を行い,測定精度が分布形状に依存して変化することなどを明らかにしている。

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