IoTを活用した子育て支援に関する研究

情報科学部

ネットワークデザイン学科

インテリジェント情報通信システム研究室

山本雄平 講師

共同研究者

太一

我が国では,少子高齢化が進み,介護や子育ての肉体的,心理的,経済的な負担感の増大が課題となっている.中でも,排泄時のおむつ交換は,不定期に発生することと衛生面の問題から早期に解消することが必要であり,そのタイミングを検出することが求められている.こうした背景の下,本研究では,IoTデバイスと空気の成分を計測する臭気センサを用いて,おむつ交換のタイミングの検出と可視化を試みる.

IoTデバイスの作成

  • IoTデバイスに「Rasberry Pi Zero」,臭気センサに「TP-401A」を使用し,空気中の臭気データを収集する安価なIoTデバイスを複数台作成した.
  • TP-401Aは,空気中に存在するアンモニア,水素,アルコール,一酸化炭素,メタンなどの揮発性気体などを計測し,4チャンネルの数値データとして出力できる.
  • これらを組み合わせた計測用のIoTデバイスを作成して,一定間隔で常時計測し,ネットワークを経由して解析サーバに臭気データを蓄積するシステムを構築した.
図1 IoTデバイスの構成

臭気データの分析と検出モデルの構築

  • 臭気データを用いて排泄タイミングの検出モデルを構築するため,トイレおよびその周辺に一定期間デバイスを設置してデータを計測した.
  • 事前実験として,臭気センサから得られる各チャンネルのデータと,実際の排泄のタイミングを手記することで,排泄時における空気中の成分を分析し,多チャンネルのデータのうち,排泄時に反応するチャンネルを分析した.
  • k-NNによるモデル構築処理では,クラス分類アルゴリズムであるk-NNを用いて,一定時間の多チャンネルの臭気データから排泄タイミングと通常時を判別する排泄検出モデルを構築する.
  • 排泄検出処理により,臭気データと排泄検出モデルから検出した排泄タイミングを出力する.

実証実験

  • 実験では,排泄検出モデルを用いて排泄検出を行い,実際に排泄時に空気中の異常を検知できているかを検証した.
  • テストデータには,乳幼児の付近に2日間設置して計測した臭気データを利用し,出力された排泄タイミングと実際に手記した排泄タイミングを比較して検証した.
  • 本システムにより計測した臭気データから,おむつ交換のタイミングの検出と可視化ができる可能性があることを確認した.
  • 一方,センサの出力値が安定せず,過去の検出時の結果を引き継いでしまうことによる誤検出や,乳幼児がセンサの設置箇所から離れる事による検出漏れ(図2 右側の空白期間)が発生する傾向が見られた.
図3 実験結果

まとめ

  • 本研究では,安価なIoTデバイスと臭気センサを用いることで,おむつ交換のタイミングを検知できる可能性があることを確認した.
  • 一方で,誤検出や検出漏れが発生する課題や,排泄時の中でも排尿や排便などの区別ができない課題が残った.
  • 今後,学習データの拡充,および判別アルゴリズムの変更により,より正確なおむつの交換タイミングの判断を目指す.

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