鋼製インフラ構造物に吸着可能な点検ドローン

ロボティクス&デザイン工学部

ロボット工学科

先端モバイルロボティクス研究室

善之 准教授

共同研究者

増田

日本のインフラ構造物は多くが高度経済成長期に建設され,老朽化が進んでいますが,点検には足場や専門技術が必要であるため,ロボットによる保守・点検作業の効率化が必要とされています.特にドローンは高所点検に適しているものの,ロータを常時回転させるためバッテリーの消耗が課題となっています.本研究では,バッテリーを消費せず橋りょう等の鋼製構造物に吸着でき,離脱の制御も容易な磁気吸着ユニットを搭載した点検用ドローンの開発に取り組んでいます,

本研究で吸着対象としているのが,多くの構造物の梁に使用されているH字鋼です.右図のように,その下面に点検用ドローンを吸着させ,ロータを停止させた状態で点検することで,長時間の点検作業を実施できます.またドローンに搭載した点検用アームを用いることで,カメラによる近接目視点検だけでなく,板厚計測などの接触を伴う点検作業の実現も目指しています.

搭載する磁気吸着機構として,鋼製構造物にバッテリーを消費せずに吸着することが可能で,吸着・離脱時の制御も容易な小型のEPM(Electropermanent Magnet)を使用してまいます.この吸着ユニットはネオジム磁石,アルニコ磁石の2種類の永久磁石とアルニコ磁石の極性を制御するためのコイル、制御回路から構成されています.

右図のEPMはW22xD28xH18mmというサイズでありながら最大で約240Nの吸着力を発揮します.磁化制御ユニットからパルス電流をコイルに流すことで,吸着するモードと離脱するモードを切り替え可能です.磁化制御ユニットに搭載されたマイコンによりコイルへ印加する電流の向きを制御しているため,遠隔操作によりEPMの吸着モードを制御することができ,人の手が届かない箇所での吸着を可能にします.

これまでに市販のドローンに磁気吸着ユニットと小型カメラを搭載したカメラアームを実装して,実構造物に対して吸着・離脱実験を行い,成功しています.

本研究室では,点検用ドローンについて引き続き研究を進めるとともに,H字鋼以外に吸着るための技術,操縦者を支援するためのGPSが使用できない環境でのロボットナビゲーション技術,点検対象物を認識するための技術についても研究を進めています.

論文

「Attractive Force Estimation of a Magnetic Adsorption Unit for Inspection UAVs」(2021)HigashiYoshiyuki『Journal of Robotics and Mechatronics』Vol.33, No.6p.1349-1358.

「Reliable Activation of an EPM-Based Clinging Device for Aerial Inspection Robots」(2019)ArataMasuda『Journal of Robotics and Mechatronics』Vol.31, No.6p.827-836.

「Verification of an EPM system for an Aerial Inspection Robot and Close-up Image Shooting」(2016)HigashiYoshiyuki『Advanced Experimental Mechanics』1巻p.179-184.

特許

特願特願2020-201561特開特開2022-89281「吸着状態判別装置、吸着状態判別装置を備える吸着装置、吸着装置を備える無人飛行体またはロボット、吸着状態判別方法、吸着装置の制御方法、および、吸着状態判別プログラム」

特願特願2019-137035特許第特許7235618号特開特開2021-021594「吸着力推定方法、吸着力推定装置、および、吸着力推定プログラム」

研究シーズ・教員に対しての問合せや相談事項はこちら

技術相談申込フォーム