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研究テーマ
IT・IoT・AI・ロボティクス
学科の分類
情報科学部情報知能学科

遺伝的アルゴリズムによる地上放送システムの無線資源割り当て最適化技術

情報科学部

情報知能学科

知能無線システム研究室

ズオンクアン タン 准教授

本技術のコアは,遺伝的アルゴリズムを用いて放送局の送信電力と使用チャネルを割り当てる際,膨大な地図情報を取り入れると計算不能になるため,各局の放送エリアを簡単に近似できる数学モデルを構築し,これを最適化アルゴリズムに入れることで,計算を可能にする.

背景

放送局は電気を使用して予め割り当てられた周波数帯域(チャネル)で送信している.すなわち,放送に電力とチャネルといった無線資源が消費されており,その使い方次第で消費される資源決まるため最適化が必要である.一つの局の放送エリアは有限であり,その広さと形は送信電力や周辺の地形で決まるため,複数の放送局が協力して広い地域や国全体をカバーすることになっている.その際,隣接局の放送エリアが重なることなくきれいに全域をカバーできればすべての局に同一のチャネルを割り当ててもいいですが,放送エリアの重なりが存在すると混信が発生するため,隣接放送局に異なるチャネルを割り当てなければならない.すなわち,放送局の電力とチャネルを割り当てる時,地形を十分に考慮することが重要である.

本技術のポイント

上述したような実数変数(電力)と整数変数(チャネルの番号)が混合する最適化問題には,遺伝的アルゴリズム等の手法がよく用いられる.標高などの地図情報を計算アルゴリズムに入力すれば,理論上解を求めることができる.しかし,広い地域や国全体の標高情報等は膨大であるため,計算時間は非常に長く,永遠に解が求められない状況に近い.そこで,本技術では,膨大な地図情報から,送信電力とチャネル割り当てが与えられた時に簡単に放送エリアを近似できる数学モデルを構築し,これを最適化アルゴリズムに入れることで,計算を可能にした.

評価

本技術を,山と谷が多く地形が複雑なネパールの放送システムに適用した.図1に根パルの標高地図と現状(最適化前)の放送局の使用電力とチャネルを表している.

図1:ネパールの標高地図と放送局の現状(位置、使用チャネル、送信電力)

図2に本技術で最適化された電力とチャネルの割り当てと放送エリアを示している.同図より,3つのチャネルだけ使っても現状と同等なカバレッジは達成可能であることが分かる.最適化前5つのチャネルを使用しているため2つのチャネルは節約できた.理由としては,山と谷はあるから隣接放送局同士は同じチャネル使っても深刻な干渉にならないので 40の周波数資源の節約はできたと思われる.また,最適化を行うことで,カバレッジをおよそ 10% 改善できたことも分かる.

図2:最適化された電力とチャネルの割り当てと放送エリア

論文

「Optimization of Multi-Frequency Network With DVB-T2 Services for Regions With Complex Geographies: A Case Study of Nepal」(2021)SubodhNepal『IEEE Transactions on Broadcasting』67(1)p.299-312.

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